2006年03月31日

教科書と隣国

日本の教科書検定に関して近隣諸国から反発があったようですね。

ロシアから(30日)
ロシアも教科書検定を批判 北方4島について

韓国から(30日)
教科書に「竹島は日本領」明記、韓国外相が抗議

中国からも(30日)
【教科書検定】中国政府も強力批判

対する日本側の反応。
小泉首相、「教科書検定、私が口出しする問題でない
この記事によれば、日本政府は教科書問題を、外交問題としては正面から扱わない対応をしているようです。

そして新聞社より早いTV系のニュース。
文科相「我が国の立場で正確な記述」

わが国の教育で使う教科書だから、わが国の立場で正確に記述する、ということ」(小坂大臣)
 小坂大臣は31日の閣議後の会見でこのように述べ、竹島が日本の領土であるとする日本政府の立場を改めて示しました。
 また「検定に合格した教科書を使って、指導要領の狙いに沿った教育が行われることを期待している」とも述べました。(31日11:38)


今回の抗議は領土問題にポイントが絞られているようですから話は簡単です。

日本政府の対応は正しい。

領土問題がまさに起きているのですから、一方の当事国である日本が自国教科書で自国の主張を教えるのは当然の話であり、利害敵対国である中国や韓国やロシアがそれに異議を唱えること自体、変な話です。
日本は近隣諸国の教科書の記述に口を挟んだりはしていません。その対応も、私は妥当だと思います。隣人が変だからといって、こちらまでが変になる必要はありませんから。


ただ、この問題では私は次の記事を知り、考えさせられました。


「日本だけ自国中心?」…韓中日歴史教科書比較 】(2006/01/30)

 「近現代史とは、“自分の国”だけが唯一闘争し、業績を残した歴史なのか」

 韓中日3か国の歴史教科書の記述が相互交流の内容を記すよりは、むしろ徹底して「自国中心」の側に傾いているとの分析が出された。

 韓国教員大の金漢宗(キム・ハンジョン)教授ら7人の近現代史専攻者らが共同で出版した研究シリーズ「韓中日3か国の近代史認識と歴史教育」は、望ましい歴史認識の共有に向け3か国の近代史認識をすべて批判的に検討したもの。
(中略)
 もちろん最も根本的な間違いを犯しているのは日本の教科書だ。しかし、他の国の教科書には全く問題がないのだろうか

 韓国の第7回教育課程上の「韓国の近現代史」教科書の日帝時代について書かれた部分は、各時期の代表的な経済政策を通じ日本の経済侵略とそれに苦しむ韓国人の姿を記述している。

 ところが、日本が本国の資本と商品を「輸出」できる「市場」として植民地朝鮮を作ったという記述と、朝鮮の土地を「略奪」し米や資源を「収奪」したという内容が混在している。需要と供給による輸出入という資本主義的経済行為までもすべて「収奪」として画一化する矛盾を内包している、というわけだ。

 また、日本が台湾と満州をどのように支配したかに対する記述が全くなく、周辺の歴史を韓国との関連性の中で見ることができないようにしている、との指摘だ。

 中国は現代史を「中国人民が民族独立と社会進歩を勝ち取るため、反帝・反封建闘争を行った歴史」、すなわち侵略と抵抗の歴史として圧縮している。

 日本軍の占領地域での政策は「野蛮的経済的略奪」と「奴隷教育の実施」に圧縮記述され、収奪と民族抹殺を強調している点で韓国と似ている。

 民族運動に関する部分でも事情は似通っている。春川教育大の金正仁(キム・ジョンイン)教授は、『3か国の民族運動に関する歴史認識の分析』で韓国の教科書が右派と資本主義系列中心の民族運動史を追及し、中国は共産党中心の抗日戦争と社会主義的愛国主義を強調している、と分析する。

 一方、日本は被支配民族の抵抗歴史に対する記述そのものが簡略化されているため、教科書を読んだだけでは「日本は加害者」という明白な歴史的真実をつかみにくい。

 闘争の歴史に対する共有と交流に到達するためには、依然として長き道のりが残されているというわけだ。



やや古い記事でしたが、これが【朝鮮日報】発の報道だったということに、私は感銘を受けたのです。
これは本来、(「根本的な間違いを犯しているのは日本の教科書だ」の部分を除き)日本側のメディアが書いてしかるべき記事でした。

韓国メディアは韓国の主張をし、日本メディアは日本の主張をする・・・のが、本来あるべき姿でしょう。韓国メディアの主張は「根本的な間違いを犯しているのは日本の教科書だ」の部分です。したがって当然、日本人読者である私は、この部分に関しては発信が韓国メディアであることを考慮しつつ受け取りますが、その他の部分に関しては、公正であると思いました。
翻って日本メディアはどうでしょう。「根本的な間違いを犯しているのは近隣諸国だ」と主張することなど、私も最初から期待していませんが、この主張部分を除いた分析部分でさえ、報道されたことがあったでしょうか?

韓国メディアが認める韓国(や中国)の自国中心主義、歴史教育を、日本メディアはなぜ伝えないのでしょう。隣国が自国中心の歴史教育を行っているかどうか、は、日本国内の世論形成にも微妙な影響を与えるはず。つまりそれこそが判断の元になるべき情報として求められている報道のはずなのに・・・ね?

そういう報道を行えば不穏な嫌韓・嫌中派が増えるかも・・・と、心配する向きもあるのかもしれませんが、私に言わせれば、心配御無用です(笑
事実を知らないで形成された好意など、嫌悪感と同様、所詮は幻想にすぎません。もちろん行き過ぎた嫌中・嫌韓も、私の目には幻想としか映っていないのは言うまでもないことです。
そして日本も否応なくそこに組み込まれている国際政治が年々緊迫の度を増してゆく昨今、もはや日本にはいかなる「幻想」も国内に蔓延らせておく余力はなくなってきているのだと思います。

そうした厳しい情勢・・・だからこそ、メディアには真実を伝えて欲しいわけですが。
それが期待薄だから、私はネット情報も頼りにしている・・・というのが現状なのですね。


もうひとつ知った朝鮮日報の報道をついでに。


NYT紙「日本の教科書、韓中よりバランスが取れている」】(2005/04/18 13:54)

 同紙は「教科書制作における綿密な調査と日本の相対的に長い歴史を持つ民主主義史を勘案すると、日本の教科書はおそらく同地域の韓国・中国よりバランスが取れているかもしれない」と主張し
(中略)
「ニューヨークタイムズは韓国と中国も歴史教科書に特定事件を誤って記述したり、省略したりする部分が無いわけではなく、代表的な例として中国の教科書が『米国ではなく中国の抵抗が第2次大戦で日本を敗退させた』と記述している点を挙げた」



米国ではなく中国の抵抗が第2次大戦で日本を敗退させた」・・・こういう歴史認識であってさえ、米国も日本も外交レベルで批判してはいません。
そういうことです。

posted by 水無月 at 15:48| Comment(2) | TrackBack(4) | 中国・朝鮮・在日 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月25日

被害者かそれとも・・・(メール問題)

メール問題。
「もう飽きた」との声も聞かれますが、動きがあったようですね。
とりあえずこちら↓。


■永田氏答弁の骨子
 一、メールを持ち込んだ「フリー記者」は西沢孝氏で、出版社役員
 一、氏名を明かしたのは、偽物の情報をつかまされ、友好な信頼関係はないと考えたため
 一、メールの作成者はいまだに分からない
 一、メール提供は西沢氏の自己実現と、私の功績にしてほしいというのが動機だと思う
 一、西沢氏に雑誌購入費42万円を支払ったが、対価であり情報の見返りでない
 一、自分はだまされたと思っている。被害者であると同時に加害者であることは間違いない
 一、政治に国民の信頼を取り戻すことが自分の責任の取り方


以上サンスポ【永田氏がついに情報提供者公表…“いわくつき”のフリー記者】より
http://www.sanspo.com/shakai/top/sha200603/sha2006032501.html


「メール仲介者は、西澤孝氏」と永田議員。
「事実無根だ」と西澤氏(笑
(念のため末尾に報道資料を載せておきます)

(ちなみに、これに関係して錯綜したネット情報については
 【世界の中心でヲチをするノケモノ】(plummetさん)「嘘つき?」
 が的確にまとめてらっしゃいます。参考までに。
 http://d.hatena.ne.jp/plummet/20060324/p2
 「西澤」が本名、「F」は一種の筆名・・・というのが正解だと私も思います)


というわけで本題ですが、バッシングに耐えられず五月雨式に情報を垂れ流す民主党。実に痛いですね、というか痛々しいと言うべきでしたか(苦笑
どちらにせよ幕引きは遠いです。なにしろ西澤氏は否定しているのですから。これはもう、とことん行くところまで行ってもらわねばなりません。証人喚問なんて茶番劇・・・見たいですか? 私は時間の無駄だと思いますがね。謝罪広告も要りません。広告に何千万支払ったか知りませんけど、それで事が済むのは代議士先生の間だけのことであって一般人は到底納得できないと思います。

武部氏次男さんには是非、永田氏を名誉毀損でもなんでもよいから告訴して頂きたいものです。そして永田氏には西澤氏を法廷へ呼んでもらいましょう。武部氏次男さんが告訴しないなら永田氏単独でも西澤氏を告訴すべきです。なんといっても42万円(!)で偽情報を掴まされたわけですからね。
民主党党首前原氏は42万円の情報で「党首討論を楽しみにしててください」とTV視聴者に大見得を切り、民主党は結党以来最大の危機を迎え、国民は最大野党への信頼を失ったわけですか、そうですか。どうもありがとうございます。
こうなったら是非とも永田氏言うところの「自己実現」の舞台を西澤氏に用意してあげたくなりますね。それには国会なんて狭すぎます。白黒キッチリ決着のつく舞台の方が相応しいでしょう。自己実現、結構です。良いじゃないですか。ついでに永田氏にも前原氏にも思う存分自己実現してもらってかまいません。国民の方は42万円の自己実現、最後まで見届けずにはおかないでしょう。


そして時間は前後しますがこちら↓。

産経新聞【メール問題 民主また難題 野田氏「墓場まで持っていくしか…」】(03/24 07:48)

 馬淵氏のホームページにある今月八日付「不易塾日記」によると、同二日夜、馬淵氏が東京・神楽坂のバーに野田氏を呼び出しカウンターでグラスを交わした。馬淵氏が「十分なお役に立てなくて申し訳ありません」と話すと、野田氏は「いやー、いろいろあったけど墓場まで持っていくしかねぇなー」と笑って話したという。

 墓場まで持っていかねばならないメール問題の核心情報とは、どんな内容なのか。問題が収束しない中、火に油を注ぐ野田発言に同党の若手議員の一人は「野田氏も野田氏だが、それをホームページに載せる馬淵氏も同罪だ」と怒り心頭だ。


 馬淵氏は耐震強度偽装事件の追及で注目を集めたホープ。あまりの能天気ぶりに党内の失望感は極限に達している。

http://www.sankei.co.jp/news/060324/sei035.htm


馬淵氏がホープ・・・。そうでしょうか? そうなんですかね??


【まぶちすみおの「不易塾」日記】「前人未到の荒野」(2005.12.20)

自民党による証人喚問拒否をどう突き崩すか!?。

この新たな命題に向かって、徹底的にメディアを使ってのアピー
ルを展開してきたこの二日間なのだが、いよいよ新たなチャレ
ンジを試みた。

ブログとのコラボレート(協働)である。

多くのメールやファックスや電話でもお知らせいただいていた、
ネット上のブログ、「きっこの日記」の作者との共同作業を思
い立ったのである。

国会質疑の中で、激励いただいた方々からの情報によって知っ
たこのブログの作者がどのような方かはまったく存じ上げない。
しかし、新たな大衆の声として、大きな支持を得ていることだ
けは事実である(読め!との連絡ひっきりなし!)。

全国会議員への、証人喚問の是非を問う緊急アンケートの実施
要望!。「理事会が決めた」、「委員会が決めた」とは言わせ
ない、「あなたは、どう思う?」と国会議員の生の声を問う、
ネットからの発信。

果たして、どのような結果になるかはわからない。
が、おそらく憲政史上初めての、「ネット連動型国民運動」で
ある。

もはや、個人の活動領域を超えることになるが、とりあえず今
日、おそばについていた野田国対委員長にもご相談申し上げる。

「素晴らしい!。前人未到の荒野のごとき、大国民運動になる!。」

の言葉をいただいた。
やるしかない。
もはや、止まることはできない。

http://www.election.ne.jp/10679/archives/0002241.html


このブログの作者がどのような方かはまったく存じ上げない」と自ら認めるネット上の人物と、いとも容易くコラボレート(協働)してしまうホープ・・・。
それを「素晴らしい!。前人未到の荒野のごとき、大国民運動になる!」と激励する国対委員長(当時)の野田氏・・・。
メール騒動はどうやら起こるべくして起こったもののようですね。

大国民運動・・・は民主党バッシングとしてめでたく実現したようです。
お望み通り到達した「前人未到の荒野」からの眺めはいかがですか?


とりあえず民主党には、一刻も早く永田氏を辞任させ、執行部の指導力を見せてもらいたいものです。
そして西澤氏やメールを巡る疑惑のあれこれにハッキリと片をつけること。しかしこんな問題をいつまでもダラダラ引きずられては国民が迷惑するだけですから、関係者には即刻司法の場に移動してもらいたいですね。野田氏にももちろん、墓場まで待たず今すぐすべてを語ってもらいましょう。

ネット上には根強くきっこ氏と西澤氏、また元オウム信者の松永氏との繋がりを指摘する声があります。話題性も十分ですからネット上の世論が今後も加熱することは避けられそうにありません。
そうであれば、民主党としては自ら「疑惑」を積極的に解明する(解明に協力する)姿勢をこれでもかと鮮明に打ち出すしかないでしょう。
そうでなければ民主党が意図するような、騙された善意の「被害者」になど到底なれませんよ。


被害者・・・でなければなにか。ただの敗残者でしょう。



◇以下報道資料

【<偽メール>4日にも西澤氏の証人喚問 衆院懲罰委】
(毎日新聞) - 3月25日1時13分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060324-00000116-mai-pol

 衆院懲罰委員会(岩國哲人委員長)は24日の理事会で、偽メール問題をめぐり、永田寿康衆院議員(民主党員資格停止中)がメール仲介者として公表した西澤孝氏の証人喚問を来月4日にも行うことで合意した。証人喚問は全会一致が原則で、29日の同委員会で正式に議決する見通しだ。懲罰委が議院証言法に基づく証人喚問を行うのは初めて。理由なく出頭しなかった場合は同法により、1年以下の禁固または10万円以下の罰金が科される。
 民主党は当初、証人喚問に慎重だったが、西澤氏が代理人を通じ「(メール提供は)事実無根だ」と主張。永田、西澤両氏の説明が食い違ったため、喚問に応じる姿勢に転じた。同党の鳩山由紀夫幹事長は24日の記者会見で、喚問を受け入れる理由について「(西澤氏に)正直に質疑に答えていただくよう、証人喚問を求めた」と説明した。
 岩國氏は理事会終了後、記者団に対し「来月6日には結論を出したい」と述べ、証人喚問後、早期に永田氏に対する懲罰内容を決める意向を示した。しかし、自民党の逢沢一郎幹事長代理は24日、懲罰委での質疑について「真相の全面解明にはほど遠い」と指摘。今後の焦点として(1)メールの授受をめぐる永田、西澤両氏の説明の食い違い(2)メール作成者の名前と目的――などを挙げた。【平元英治】
   ◇
 衆院懲罰委が証人喚問を決めた西澤孝氏の代理人、和久田修弁護士は24日、毎日新聞の取材に対し「証人喚問が決定したということで本人と話した。慎重に対応しなければいけないので、今日の段階では具体的なコメントを控えたい。証人喚問を受けるかどうかも含めて検討する」と述べた。


posted by 水無月 at 20:20| Comment(3) | TrackBack(3) | 国内(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月16日

受け入れる側の論理

個人的には、以前(3/6)にUPした【松本被告次男入学拒否のニュースで思うこと】(http://yohaku.seesaa.net/article/14272155.html)で「この問題に、私はまだ決着をつけられていません」などと保留にしておいたツケが回ってきたような気がしました。


【 経 緯 】

「アルファブロガー」松永英明氏が元オウム真理教信徒であった過去を自ら認めました。


・過去の経歴の部分については、野田さんの公表されたとおりです。

・現在、私は団体に所属していません。そこから飛び出したという表現がしっくりくるかと思います。

【備忘録ことのはインフォーマル】
http://d.hatena.ne.jp/matsunaga/20060313#1142201603


(管理人注・・・「野田さん」は【ESPIO】の野田敬生氏のこと。
 以下【ESPIO】より引用)

4.「河上イチロー」
 河上イチロー・・・90年代後半に活躍した伝説的なネットワ
ーカーである。筆者と同年代のネット利用者ならその名を知らぬ
者はいないだろう。「河上イチロー」は勿論ペンネームだ。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4947737026/

 河上氏はかつて "Der Angriff"(ドイツ語で「攻撃」の意)と
いうHP(掲示板群)を主宰していた。長らく何者であるかは誰
にも分からなかった。しかし、後にオウム信徒である(あった)
ことを暴露され、2000年10月、「河上イチロー」という架
空人格はネット上から姿を消した。

・・・(中略)・・・

筆者はある調査を通じて、「松永英明氏=河上イチロー氏」で
あることの客観的で、かつ動かぬ裏付けを取ることに成功した。
 今回の記事で上記4のとおり指摘するのは、決定的な根拠が存
するからに他ならない

【ESPIO ■M.V.Project HONDA Sigekuni Vol.405 02/27/06】
http://espio.air-nifty.com/espio/2006/02/mvproject_honda.html



こうした経緯は、私個人にも少なからぬ衝撃を与えました。とはいえ、私は松永氏も、その主たる活躍の場であり結果であった【絵文禄ことのは】も、「アルファブロガー」という言葉ともども、つい最近まで全く知らなかったのですから、衝撃を受けたといっても、それは
「自分も利用していた『BLOG』あるいは『インターネット』という世界でのすぐ隣人に元オウム信徒がいた」
という事実からもたらされるものです。

私自身がこのニュースに触れた経緯は以下の通りです。
まず耐震強度偽装問題に関心を持つ
→この事件で一種のスクープを飛ばし続けていたらしい【きっこのブログ】の存在を知り、その管理人が誰かという話題がネット上で盛り上がっていることを知る
→【絵文禄ことのは】の松永氏が【「きっこの日記」五年分すべてを通読してわかった。きっこの正体(きっこの日記検証1)】で始まる一連の記事をUPしていたことを知る
→民主党メール問題が起こる
→政治とインターネットとの関わりについて、深浅広狭は様々なれど興味関心あるいは問題意識を抱く
→上記問題意識から巡らせていたアンテナに当ニュースが引っかかった

つまり、私が【きっこのブログ】や【絵文禄ことのは】を知ったきっかけは現実の政治であった、ということです。逆に言えば、それらのサイトが現実の政治に関わらない限り、少なくとも私に関しては、【きっこのブログ】や【絵文禄ことのは】を知ることはなかった、ということ。
私にとってこれは意味を持つ事実です。


【 元オウム信徒を受け入れるには 】

松永氏のニュースに触れた時、私が一番に考えたのは、私が元オウム信徒であったらどうするか・・・ということでした。
それは結局、サリン事件等を団体で起こしたオウム真理教という組織に人生の一時期所属していた人間は、その後どのように社会へ戻ってゆくことが可能か、という問題と同じです。
けれどもその問題を考える前に、私は幾つもの根本的な前提となる問題があることに気づきました。それは例えば以下のようなことです。

・オウムとアーレフを同じものと看做すのか、それとも別物と考えるのか。
・オウムは宗教団体か、それともテロ組織か。

私の理解では、「オウムは宗教団体でありかつテロ組織であった」が、「そこから人的資源や教義等その他諸々を引き継いで存在しているアーレフは、宗教団体としてのみ存在を許されている」、というものです。だからアーレフは現在も(テロ組織化しないよう)公安組織から監視されているのでしょう。

さて、そういう前提で考えてみます。
かつてオウムに在籍したことのある人間はどのように社会へ戻ることができるのか。
私にはふたつの道しか考えられません。

 @ オウム的価値観から完全に離れ(したがってオウムの教義を引き継ぐアーレフからも当然に脱退し)、日本社会の価値観を受け入れこれに従って生きる。
 A 宗教的教義を含めたオウム的価値観から完全に自由になることができないならば、(アーレフに在籍するにせよ脱退するにせよ)オウムへの批判を自己への批判として甘受しつつ生きる。

失われた命が決して元には戻らないように、オウムの罪は事実(歴史)として残り、永久に消えることはありません。
そうした団体にかつて一度でも共鳴してしまった過去を持つ個人としては、罪の象徴=オウムと自己との距離感をどのように取るか、というくらいことくらいしか、もはや取るべき道はないように思うのです。
そしてもちろん、@であるにせよ、Aであるにせよ、オウムの罪と自己との関わりを最大限真摯に、極限まで、突き詰めたあとでなければ、社会への復帰など不可能でしょう。
たとえば、オウム組織のごくごく末端に所属し、教団が反社会的行為等に関わっていたことを全く知らなかった場合であってさえも、そうした組織であると自分が見抜けなかったこと、密かに殺人を計画し指示していた「教祖」の教えに自分が共感を覚えたこと、などを突き詰めなければならないはずです。
そしてそこを突き詰めてゆけば、自身の判断力や思考力への疑義が当然に生じるはずです。
それはつらいことに違いないだろうと思います。かつての自分を否定することにも通じるでしょう。けれどもまた、そうしたつらい、魂から血の吹き出すような反省や自己否定を経たあとでなければ、日本社会は彼らを受け入れることはできないだろうとも、思うのです。オウムはそれほどのことをしでかしてしまった・・・わけですから。


【 松永氏の場合 】

回りくどいですが、私は以上のようなことを考えてからでなければ、松永氏をどのように私自身が判断すればよいのか、考えることができませんでした。
松永氏はかつてオウムに所属し、今は離れたと述べています。松永氏を私が知ったのはつい最近であり、彼の著書やウェブ上での発言を私は大部分知りませんでした。また、私が彼を知ったのは私自身の現実の政治への関心からです。
以上のようなことを考え合わせると、残念ながら、私はまだ松永氏の発言を完全には受け入れることができない、と判断せざるを得ません。つまり、松永氏の現在、そして過去の発言を額面通りに受け取る(信じる)ことは留保したい、という意見です。


私の疑問は、なぜ彼がオウムやアーレフを脱退したにもかかわらず、あえて政治に近づくような発言をした(【きっこの日記】に関する記事をUPした)のか、ということです。
松永氏はオウムやアーレフとの現時点での関わりを否定しています。そうであれば、過去を暴かれることは氏の望むところではなかった・・・はず。世間で話題になっている事柄に関して発言すれば、当然、自身も注目を集め、結果として過去を暴かれる危険も予想できるでしょう。また、本当にオウムやアーレフとの関係を絶ち過去を清算していたのであれば、自身の判断力や思考法には強い疑念を抱いて当然なのですから、政治的な意味を持つ問題に関しては尚更、発言を控えておこうと思うものではないのでしょうか。
松永氏はそのほかにも、民主党や自民党の主催する著名ブロガー懇談会へ出席しています。これもまた、明らかに政治へ近づく行為です。

松永氏自身は以下のように述べています。


・民主党・自民党の懇談会については、完全にブロガーとしての立場ならびに思考で参加させていただきました。私自身、ここまで問題視されることであるという認識はなく、その認識の甘さについては、ご迷惑をおかけした各方面にお詫びせねばなりません。しかし、私は単に「ちょっと違ったところでおもしろい話が聞けて、それを皆さんにお伝えする」というだけの気持ちで参加したものであり、それ以上でもそれ以下でもなかったという事実については申し添えねばなりません。もちろん、そのように認識が甘かったということについては、批判を受けねばならないと考えています。
【備忘録ことのはインフォーマル】「一連の疑惑について」
http://d.hatena.ne.jp/matsunaga/20060313#1142201603


とりあえず、元オウム信者は今の日本社会において「終身執行猶予つき終身刑」みたいな状況に置かれているわけです。つまり、何か悪いことをするんじゃないかという目で見られ続け、しかもそれは死の瞬間になって「ああ、この人は何もしなかったね」ということでしか証明できない。言い換えれば、今、私がすべてを証明することなどできやしないので、今までどおり、読者の役に立つ(あるいは知識としておもしろい)話題をブログで提供し、役に立つ本を書き続ける、あるいはその他何か社会の役に立つ事業を行うという方向性を保ち続けて寿命を迎える以外に道はないと思う。この人はもしかしたら何かたくらんでるんじゃないだろうか、と疑われ続けるという状況からは、死ぬまで逃れられないだろう(もちろん、相手によるが、社会一般として)。

【備忘録ことのはインフォーマル】「今の気持ち」
http://d.hatena.ne.jp/matsunaga/20060315#1142387396


以上からは、元オウム信徒として社会から特別視されることの被害者意識は読み取れますが、かつてオウムに所属していた自身の判断力や思考法を疑い、そこから苦しみながら立ち上がった、という精神的苦闘の痕跡は一切窺えません。

精神的苦闘の痕跡が窺えないから、彼が苦闘しなかった・・・とも、言い切れないものと思います。私は松永氏に関してほとんどなにも知りません。彼はもしかしたら、真摯に反省したことを公にする行為へ一種の「恥ずかしさ」を感じるような性格の人かもしれない、からです。

けれどもそのように好意的に考えてもやはり、なぜあえて政治的な意味を持つと受け取れる行為をしたか、という疑問は残ります。
(この疑問は、松永氏がアーレフにとって利益になるようななんらかの目的意識の下に、これまで計画的に発言してきたのではないか、という疑いへと道を開くものでもあります)


【 受け入れる側の論理 】

私は、以前にオウム信徒であった人は、その過去を隠したまま、社会に政治的な影響を与えるかもしれない行為をすべきではない、と思います。
いや、すべきでない、というより、して欲しくない、という方が正確かもしれません。かつてオウムが○○省といった国の機関を模したような内部組織を作り、どうやら本気で国家転覆を企てていたらしいと思われる節があり、事実としてサリン事件等複数の凶悪な犯罪行為を起こしていた、ことからすれば、そうした警戒心を社会の側が持つのも当然と思います。元オウム信徒であった人は、政治的や社会的発言を控えるか、そうでなければ自己の立場を明らかにしてから発言すべきでしょう。例えばアーレフのように。

だから松永氏もまた、政党主催懇談会への出席を辞退するか、もしくは、出席する前に過去を自ら公表すべきでした。さらには【きっこの日記】のようになにかと注目を集めるBLOGに関しては発言しないような注意深さを持つべきでした。
彼が本当にオウムから脱却し日本社会への復帰を望むのであれば、最低でもその程度の誠実さ(日本社会へ対する)を示して欲しかったのです。そしてこの誠実さを示してくれないまま、こういう形で過去が明らかにされてしまった以上、もはや自己の発言が額面通りには受け入れてもらえない、という現状を甘受するほかはない、のではないでしょうか。

松永氏は懇談会へ出席したことに関し、「認識の甘さについては、ご迷惑をおかけした各方面にお詫びせねばなりません」と述べています。
正直、私はこの一文にも引っかかりました。彼の認識は確かに甘かったでしょうが、問題は、その甘さがなにに由来するものか、現在もなお彼が突き詰めて考えているとは思えない、ことです。

その認識の甘さ、つまり認識の(日本社会の側が持つそれとの)乖離、こそ、オウムの犯した犯罪への視線の温度差、にほかなりません。
日本社会へ復帰するとは、このオウムの犯罪に対する日本社会側の認識を、その本人(元信徒であった人)も共有する、ことが不可欠です。この認識の共有が確かになされている、と感じられるまで、社会の側は残念ながら受け入れることはできないでしょう。
けれどもまた、社会の側は、彼らに帰ってきて欲しいと切実に願っているのも事実だと思います。真摯に教団と自己を突き詰めることでなんとかこの乖離を埋め、ひとりでも多くの元信徒の方々に、帰ってきて欲しいと思っています。


 
posted by 水無月 at 14:25| Comment(2) | TrackBack(2) | 国内(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月13日

ピアチェックは可能か?

【 ピアチェックって? 】

まず、ピアチェック(またはピアレビュー)ってなんでしょう?

【NPO法人 "建築技術支援協会"PSATS (サーツ)】の
【●NHK教育テレビ12月8日放映「視点論点」
 「耐震偽装/構造的な問題と今後の提言」の草稿 掲載 米田雅子】
 http://www.psats.or.jp/katsudou/shitenronten.html
によれば、それは「プロの構造設計者がチェックする仕組み」だそうです。

耐震強度偽装問題にはさまざまな観点があるでしょうが、結局のところ問題点(解決法)は次の二点に集約できると思います。

  @ 再発防止策
  A 再発した場合の手当て

ピアチェックは、このうちの@への、ひとつの「解」なのでしょう。
私自身も、この問題の根本には、

  設計者のスキル > 検査機関のスキル

という問題点があると感じています。スキルには時間も含みます。検査機関の中には、構造の専門家を置いていたところもあるでしょう。しかし、審査を受け付ける件数に比べ圧倒的に人数が少なかったために、建築確認審査は形骸化し、言わば書類(の有無)をチェックするだけ・・・のような実態になっていたようです。
(例1 たとえばイーホームズ社はこのように述べています。
 「法が求める確認という行為は、法定期限内で、申請図書の全てを点検し、再設計や再計算までの検算をする義務を求めるものではない」)
(例2 ほかにも、確認審査をした自治体が偽装事件発覚後の再検査を自力でできずに民間の検査機関へ依頼した、当初確認検査時に構造計算書のエラー表示を見落としていた、などの事例から検査機関の検査能力が根本的に不足していたことが明らかとなっています)

官と民とを問わず、そもそも検査機関側に検査できるだけのスキルがなければ、設計士の高度な偽造であれ単純なミスであれ、それを見つけ出すことは絶対にできません。

こうしたことを知ると、構造設計を検査できるのは構造設計者だけだということになり、ピアチェックの重要性・必要性が切実に感じられてくるのです。



【 ピアチェックの具体化案 】


まず報道資料から。

【構造計算書、第三者機関で再点検…国交省方針】
http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe5500/news/20060222it06.htm
 耐震強度偽装事件で、社会資本整備審議会(国土交通相の諮問機関)の「基本制度部会」は22日、構造計算書改ざんを見抜けなかった現行の建築確認制度を抜本的に見直し、一定規模以上の建物について、新たに設立する第三者機関が構造設計を再点検する「ピアチェック」の義務化などを柱とする再発防止策をまとめた。

 第三者機関は、必要に応じて建築士から事情聴取を行うなど厳格に点検し、審査をパスしない限り建築確認が下りない仕組みとする。国土交通省は早ければ年内の設立を目指し、近く、建築基準法などの改正案を提出する方針だ。

 構想では、新たな第三者機関は、外部の構造設計専門家を起用、耐震強度基準を満たす設計になっているかどうかなどを再点検する。姉歯秀次・元1級建築士(48)は書面の差し替えなどで改ざんしていたことから、現在は書面で提出させている構造計算過程は電子データで提出させ再計算する。場合によっては設計者からの事情聴取も行い構造計算の偽装やミスを防ぐ。

 ピアチェックとは、専門家による二重チェックで、義務付ける対象は、高さ5階程度以上のビルやマンションのほか、病院など公共性の高い建物とすることを検討している。第三者機関は、既存の国交省関連団体をもとに組織する方向だ。

 このほか再発防止策には、▽新築マンション、戸建て住宅の欠陥に備えた保険加入などの義務化▽建物の完成前に自治体などが現場でチェックする「中間検査」の義務化▽強度不足の建物を建てさせた建築士・施工者らに懲役刑を科すなど建築基準法などの罰則強化――などを盛り込んだ。
(2006年2月22日14時35分 読売新聞)



ということなので早速国交省資料で「柱」の部分を見てみます。



【建築物の安全性確保のための建築行政のあり方について 中間報告】
平成18年2月24日発表
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/07/070224_4_.html

(前略)

4.建築物の安全性確保のため早急に講ずべき施策
 (1) 構造設計図書の建築確認時の審査方法の厳格化
  @構造設計図書の審査方法の見直し
    構造設計図書の審査は、審査方法を法令上の審査基準として
    定め、次の方法により厳正に行う必要がある。
    1)一定の高さ、一定規模以上の建築物等については、建築主
    事、指定確認検査機関が審査基準に従って入力データの審査、
    構造詳細図と断面リストの照合等を行うとともに、第三者機
    関における構造計算の適合性の審査を義務付ける。第三者機
    関においては、構造の専門家等が構造詳細図及び構造計算書
    を用いて計算方法、計算過程等の審査を行う。
     ただし、国土交通大臣の認定を受けた構造計算プログラム
    を用いて構造計算書等を作成した建築物については、建築確
    認申請時に入力データ(電子情報)を添付させ、構造の専門
    家等により構造計算プログラムの適用範囲内であること、入
    力内容に関する考え方などを審査の上、再入力し、計算過程
    における計算ミス又は偽装の有無についてチェックを行う。
    この場合、構造の専門家による計算過程の審査を簡略化する
    ことができる

    2)その他の建築物については、審査基準に従って、建築主事
    や指定確認検査機関が厳正に審査を行う。
  また、第三者機関のシステム面や運用面のセキュリティの確保を
 図るため、適正な対応策や実施体制について検討する必要がある。

(後略)



う〜ん。これ、良さそう? それともダメそう?? というあたりで長らく考えていたのですが、特に気になるのは上記内の青字で示した部分です。

  ただし、国土交通大臣の認定を受けた構造計算プログラムを用いて構造計算書等を作成した建築物については、 ← 前提条件ですね
  建築確認申請時に入力データ(電子情報)を添付させ、 ← いいね
  構造の専門家等により ← ここがピア(同業者)だ!
  構造計算プログラムの適用範囲内であること、 ← うむ
  入力内容に関する考え方などを審査の上、 ← なるほど
  再入力し、計算過程における計算ミス又は偽装の有無について ← お!
  チェックを行う。  ← 素晴らしい!!
  この場合、  ← ん?
  構造の専門家による計算過程の審査を簡略化することができる。 ← はぁ?


あまりにも「はぁ?」だったので、これをどう解釈するかで、相当考えてしまったわけですが、結局こういうことだと思います。


まず、建築確認申請時に入力データ(電子情報)を添付する。
次に、構造の専門家等
 ・構造計算プログラムの適用範囲内であること
 ・入力内容に関する考え方
などを審査する。
そして
 ・再入力し、計算過程における計算ミス又は偽装の有無についてチェック
の部分は、やらないか、または構造の専門家でない無資格者が行う



想像ですが、おそらく、図面や書類をプロの目で見て、なにかおかしいと感じた場合には再計算までしてみる、そのために念のため電子データも提出させる、そういうことなのだろうと思います。



【 ピアチェックは可能か? 】


実際のところ、前項【ピアチェックの具体化案】のような事態を、私はある程度予想していました。
というのも、単純に考えると、ピアチェックとは要するに、一定階数や一定規模以上といった条件の建築物に関して、日本全体における構造設計者の全作業件数を2倍にする、ことだからです。もちろん、設計本来の作業量と検査の作業量とを比べれば、前者の方が多いはずです。だから作業量(作業時間)自体が単純に倍加するとは言えないかもしれません。しかし相当に増えることだけは確かです。構造の専門家とは私の理解によれば、一級建築士の資格を持ち実務で構造設計に携わっている人、です。
こうした人が何人いるか知りませんが(参考・・・JSCA=日本建築構造技術者協会の正会員は2003年6月現在で3566名)、実務で設計に携わっている人・・・とは当然、日々自分自身の仕事をしているはずなのです。建築事務所へ勤めて実務で設計をしている人が、同業者の設計物をもチェックする、それがピアチェック本来の発想のはずです。自分で設計する人だからこそ、プロならではの目を持つはずだ、と期待しているのですから。
ところで、構造設計の実務者達にその時間的余裕があるのでしょうか・・・ね?(汗

私が一番に感じた疑問はここでした。そもそも、建築確認検査機関の審査が形ばかりのものになっていた原因も、突き詰めれば人手不足・人材不足だったはずです。
同じことになってしまわないでしょうか?

このピアチェックを有効に活用させるためには、最低でもふたつの条件が満たされなければなりません。

 @ 十分な専門家の数(時間も!)の確保
 A ピアチェック部分の検査料増額(専門家への報酬の確保)

Aは単純に経済的な問題ですから、その気になればクリアできると思います。最終的な消費者である住宅購入者や建築主も、制度の必要性を理解できれば納得してくれるはずです(もちろん、そのために社会へ理解を広める努力が国や行政や建築業界側にも求められるわけですが)
しかし@の方は、一朝一夕には解決しません。一級建築士や建築構造士の資格を乱発されても困りますし、これまでほとんど構造に携わっていなかった意匠建築士や引退建築士などが、突然「構造の専門家」の看板を掲げるようなことでも困ります。
となれば、検査は極力効率的になされる必要があるわけです。


また、構造計算プログラムは106種類あるそうですね。この中には当然、あるプログラムではOKでも、別のプログラムではNGである、というようなことが起こりうるでしょう。
チェックする専門家が設計で使用されたプログラムを知らない(利用できない)、という事態も考えられます。その場合にはどうするのでしょう。たとえば予めチェック可能なプログラムを第三者機関へ申告しておき、該当するプログラムの設計だけをそこへ割り振るのでしょうか、それとも割り振りは機械的に行い、もしチェックできない設計だった場合には図面や書類上の設計を目や頭や手計算で審査するに留めるのでしょうか・・・。
そう考えると、「再計算を簡略化」も十分予想できたわけです。(逆に、チェック可能なプログラムだけを引き受ける割り振り制度を考えると、使用者の少ないプログラムを利用した場合、設計者と検査者がごく少数の集団になってしまい、検査を繰り返すうちに顔見知りになってしまう、すなわち第三者とはいえなくなる、という弊害も予想できます)


専門家によるチェック、とひと口に言っても、その実現は極めて困難です。


さて、以上は私の素人考えですが、では当のプロの皆さんはどう主張しているのでしょう?
というわけで、JSCAを見てみました。

【建物の構造性能確保に向けての提言】
 2006 年2月14 日 (社)日本建築構造技術者協会 会長 大越俊男
http://www.jsca.or.jp/vol2/23news_release/2005False/jsca20050214-1.pdf

(前略)
2.構造設計の審査方法の提案

 1)計算プログラム偏重より設計内容の精査が不可欠
  構造計算は構造設計の検証に過ぎない。審査すべきは設計内容であり、計算プログラムの使い方に論点が絞られるのは危険な兆候である。偽造の発見はもとより重要であるが、それだけでは不十分であり、設計内容の精査こそ健全な社会資産である建築物の創造には欠かすことはできない。

 2)大臣認定プログラム制度は廃止すべき
  大臣認定プログラムはコンピュータが一般化した今日、その役目を終えているだけでなく、審査者が過度に依存するという弊害を生んでいるので、廃止を含めた制度見直しを行うべきである。

 3)再計算によらないチェック方法
  JSCA では行政や民間からの依頼を受けて構造設計のチェック作業を行ない成果をあげている。構造設計の審査は、基本的な数値の整合性の確認や略算的な手計算によることで可能であり、必ずしもデジタルデータ提出による再計算を行なう必要はない。

 4)審査マニュアルの策定
  単純な再計算は審査が形式化する危険性を含んでおり、あらゆる審査機関で設計内容の精査ができるシステムを目指すべきである。審査方法はまずこれをベースとする。そのためには構造設計のチェック方法、審査マニュアルの策定が急務であるが、JSCA はそれに全面的に協力し、行政や民間機関の審査員のレベルアップへの協力体制を構築する。

 5)第三者審査の採用
  第三者の審査を行なうことは意義があり、JSCA が主張してきたピアレビューに相当する。
  前項のルートに加え、規模や用途などで区分して特殊な建物を定め、第三者審査を義務付ける。実際の審査は設計実務経験者が行なう必要があるが、JSCA の建築構造士は多くの建物の設計検証を行なった実績が十分にあるため、審査に協力することができる。但し、その前提として、設計者とレビュアーの責任分担や保険との関係を整理することが不可欠である。



JSCAはもともと再計算を推奨しているわけでも、実践しているわけでもないようです。
(とすると、国交省が毎度発表している「Qu/Qun」値の根拠は? となるわけですが)
JSCAの主張は、国交省の中間発表にあった「構造の専門家による計算過程の審査を簡略化することができる」の一文とも矛盾しません。むしろ、国交省の中間発表はJSCAの見解を踏まえているのかもしれませんね。



【 ま と め 】


というわけでまとめです。

国交省の再発防止策で想定されているピアチェックでは再計算はしません

というか、たぶん全件の再計算はできないが、実情だと思います。
JSCA(日本建築構造技術者協会)は再計算無しで大丈夫と主張しています。

本当に大丈夫かどうかは、私には判断できません。


※関連エントリ・・・【耐震強度偽装問題カテゴリー


 
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2006年03月11日

非・姉歯物件がいっぱい

非・姉歯物件をまとめてみました。
(姉歯物件はこちら → 【姉歯偽装物件時系列一覧】 3/9現在)

(以下のすべてが耐震偽装物件というわけではありませんので ご注意ください)

@ サムシングルート(サムシング活鼡煙囃z士事務所の関与した物件)

 ・木村建設が施工したことから発見された。
 ・福岡県福岡市で三件の強度偽装が国交省により確認済。
(仲盛昭二所長=一級建築士は「書類上のミスで偽装ではない」と反論)
 ・サムシングは2002年に倒産。最盛時50人の建築士を抱え
 計12000棟の設計に関わったとされるが、関係書類は散逸し
 構造再計算が不可能な物件も多い。

 →11日、三件のうち二件が別の計算方法では強度を満たすことが判明。
  http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_06031104.htm


A 田中ルート(田中テル也構造計画研究所の関与した物件)

 ・木村建設が施工したことから発見された。
 ・物件名:セントレジアス鶴見/建築主:ヒューザー/
 設計者:下河辺建築設計事務所/建築確認:日本ERI/Qu/Qun:0.64
 ・横浜市で一件が「偽装はないが構造計算の誤りと考えられる原因により
 建築基準法の求める耐震基準を満たしていない物件」と国交省で確認済。
 (【建築よろず相談】ではこの見解に疑問を呈している)

 ・田中瑛也氏は日本建築構造技術者協会(JSCA)の会員
 (http://www.jsca.or.jp/vol2/11as_eng/list2005/05tokyo.html


B 熊本県ルート(非姉歯で複数の設計事務所が関与した物件)

 ・木村建設が施工していたところから発見された。
 ・2月8日、熊本県が強度不足の物件として6件を発表。調査で耐震強度を
 満たしていないと判明したのに国への報告を遅らせたことが問題となる。
  →10日、関係する建築士9名全員が偽装を否定。
     中山構造研究所(中山明英一級建築士)は県の計算方法に
     問題がある(=県のレベルが低い)ことを指摘して反論。

  →13日、熊本県が新たに16件を発表。強度不足が疑われる物件は
     計22件となり再度熊本県が検証をすることに。
  →14日、国交省は、22件のうち中山構造研究所設計の7件につき
    「高度な知見を要する」との理由で、国交省が検証することを発表。
  →当エントリ記述時点で、強度不足物件はなし。
     1件は強度が十分であることが確認された。
  →5月24日熊本市の発表により、国側に検証を委託していた6件の
   安全性が確認された。(5月31日追記 末尾の※補注1もご覧下さい)



C 札幌ルート(浅沼良一二級建築士が関与したもの)

 ・札幌市内のマンション建築主が、自社物件の検証を行ったところ
 構造計算書に疑義が生じたため発覚。
 ・浅沼建築士は北海道内で112棟の構造計算に関与、うち33件で
 偽装を認め、5件について札幌市が偽装を確認済。

 ・二級建築士では手掛けられない複雑な物件の計算を行っており
 建築士法違反(無資格業務)の可能性もある。
 ・浅沼建築士は第三者の関与を否定し、耐震強度には自信があると釈明。
 「個人的な解釈で、保有水平耐力の基準そのものに疑問があった」
 「耐震壁を多く採用して建築した物件は耐震性に問題がないと信じてい
 る
。過ちは過ちかもしれないが、考えを理解してほしい

 http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe5500/news/20060307i216.htm


D その他 非姉歯かつ非木村物件での強度偽装・強度不足は
 今のところ報告されていない。
 (非姉歯で木村建設・ヒューザー・平成設計・総合経営研究所の
  関与が確認された物件総数584件のうち、調査済は417件。71%)



上記をまとめるにあたっては国交省公表資料と、日本語配信ニュースを参考にしました。

なお、上記はこれまで報道がされたものの中から、非・姉歯物件をまとめたものです。
特にBの熊本ルートでは、偽装に関しても強度不足に関しても、まだ確定したものは一例もない、ということを強調しておきます。国交省が中山構造研究所の主張を認めたことからも、おそらく(少なくとも中山構造研究所では)偽装などの不法行為はなく、むしろ県を上回る高レベルな設計を行っていたのではないかと推測できます。けれども、もしそうであるならば、そうした高レベルな(国の発言によれば「高度な知見を要する」)設計を現場が行っており、それを、検査する側の自治体が理解できていない、という事態そのものに問題があると考えたため、あえて記載しています。(3月11日 10:30補記)


◇       ◇       ◇



以下は私の雑感ですが、まさに泥沼・・・の様相を呈してきていますね。
耐震強度偽装問題の背景にあるのは、どうやら経済設計思想だけではないようです。

とりあえず、構造計算が非常に複雑であること(「高度な知見を要する」)、したがって自治体や民間検査機関では偽装がもし行われていた場合、それを見抜くことなどはじめから不可能であった、ということはわかりました。そもそも建築確認制度自体が、偽装やミスを想定していなかったのでしょう。誤りがあるかも? という前提でそれを「検査」することが目的なのではなく、「建築確認を下ろす」こと自体を目的としていた・・・のでしょうね。

しかし残念ながら、構造設計に関わる一部の建築士たちは、そうした前提にまったく馴染まない存在でした。
JSCAの会員がミスをしていたり(田中設計士の場合)、そもそも資格のない二級建築士が下請けとして設計していた(浅沼設計士の場合)なんて、一般の人には想像もつかない事態です。それが想像できるのは、おそらく業界内部にいた人達だけ・・・でしょう。そうした業界内部の人達の中にも良心的な人は大勢いたに違いないですが、事件前に彼らの声が外へ漏れてくることはありませんでした。実に残念なことです。

そうした中で、建築士の皆さんが運営しているらしい【建築よろず相談】のような存在はとても頼もしいです。
http://www.shou.co.jp/yorozu/naibu/frame-heya.htm
この中では、JSCA所属の田中テル也構造計画研究所設計「セントレジアス鶴見」の問題点を、鋭く指摘しています。私のような素人は報道で「田中研究所と日本ERIとの二重のミス」
http://www.asahi.com/special/051118/TKY200602170339.html
などと説明されれば、そういうものかと思うしかありません。けれども業界事情に詳しい建築士らが「おかしい」と指摘しているのであれば、やはりおかしいのでは? と思えてきます。
逆に言えば、設計士のような人達が積極的に問題点を指摘してくれなければ、一般の人間は疑うことさえできない、という現実があります。専門家の皆さんの誠実で真摯な発言・・・なによりも良心・・・に、期待するばかりです。


専門的といえば「許容応力度等計算」と「限界耐力計算」、二つの計算方法で結果が大きく異なる問題については、国交省がどうやら取り組むようです。
http://www.asahi.com/special/051118/TKY200603090451.html
JSCA(日本建築構造技術者協会)も意見を出してますね。
http://www.jsca.or.jp/vol2/23news_release/2005False/jsca200511.html

このJSCAはまた、一連の耐震強度偽装問題に関しても活発に発言しています。
http://www.jsca.or.jp/vol2/13sp_issue/200601/index.html
http://www.jsca.or.jp/vol2/23news_release/2005False/jsca200511.html
この中で構造設計士の資格新設や待遇改善などにも触れられていることは、JSCAが業界団体であることを考えれば当然とも言えるわけですが、それが本当に事態の打開のために必要なことなら、一般からも理解が得られるものと思います。
そして個人的に興味深かったのは

  ・ 大臣認定プログラム制度は廃止すべきである
  ・ 建築確認時の再計算は意味がない
   =基本的な数値の整合性の確認や略算的な方法で十分

http://www.jsca.or.jp/vol2/23news_release/2005False/jsca20050214-1.pdf
という主張や

  ・ ピアチェックは現実的か

http://www.jsca.or.jp/vol2/13sp_issue/200601/sp_issue0601-2.html
という問題提起でした。
これは重要な指摘だと思います。絵に描いた餅にならないか・・・という意味で。これについては近いうちに別エントリを起こそうと思います。なにしろ長くなりすぎたので(汗

とりあえず、非姉歯物件がぞろぞろ出てきた現状・・・を、ここに記述しておきます。



※補注1(2006年5月31日)
2006年5月25日報道の毎日新聞資料より。
【耐震計算偽造:中山建築士「関係機関は謝罪すべき」 手がけた物件耐震性確認 /熊本】
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2003032/detail

 「国側に検証を委託していた6件ともに強度は確認されました」

 熊本市は24日、木村建設(八代市、破産手続き中)が関与し、当初「強度0・43」とされたマンションを含む同市内の6物件が耐震基準を満たしていると発表。それに対し、対象物件を設計した中山構造研究所代表の中山明英・一級建築士(53)は「当然の結果」と憤りをあらわにした。

 市は当初、6物件の耐震強度偽造の有無を確認するため、県建築士事務所協会に構造再計算を依頼。同協会で「偽造なし」と判断された時点で強度は「0・43」など耐震基準を大幅に下回る数値もあった。当時から、市は精査を予定していたが、県が2月に数値と物件名を公表。中山建築士は「発表は間違い」と県や事務所協会に激しく抗議した経過もある。

 中山建築士は市の発表後に会見。最初に再計算をした協会の建築士が匿名とされたことに対して不満をあらわにし「『0・5以下』は、強制退去という社会的影響のある数字。なのに匿名で発表するのは無責任」と声を荒らげた。「不安を与えた施主と入居者に、誠意を持って謝罪すべきだ」とも訴えており、今後同協会や暫定値を発表した県に謝罪を求めるという。

 会見後、市建築指導課職員は中山建築士に日本建築防災協会の調査結果を手渡した。中山建築士は「防災協会は私の考え方を理解してくれた。精査途中の数値が公表されたことなどが混乱の原因だ」などと指摘した。


※関連エントリ・・・【耐震強度偽装問題カテゴリー

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2006年03月06日

松本被告次男入学拒否のニュースで思うこと

気になったニュース。


【松本被告の次男の入学拒否 埼玉の私立中】2006年03月02日20時13分

 オウム真理教元代表・松本智津夫(麻原彰晃)被告(51)=一審死刑、控訴中=の次男が私立中学を受験して合格したが、学校側が入学を拒否していたことが2日分かった。

 入学を拒否したのは埼玉県春日部市の春日部共栄中学校。次男の代理人の弁護士によると、合格発表は1月18日。入学金を支払った後の2月7日、学校側から電話で「松本被告の息子とわかったため、入学を辞退してほしい」と言われたという。

 学校側は2月11日、代理人の弁護士に対し、学校敷地内への次男の立ち入りを禁ずると通告。その後、「2月19日の入学説明会に来なかったから形式的にも入学資格がない。入学金などを返還するため振込先の口座を教えてほしい」と内容証明郵便を送ってきたという。次男の代理人は「仮処分申請や提訴を含めて対応を検討したい」としている。

 松本被告の三女も03年と04年、合格した複数の大学に入学を拒まれた。このうち和光大について、東京地裁は今年2月、「不許可は違法」として損害賠償を命じる判決を出した。三女は別の私立大にも入学を拒否され、学生としての地位保全を求める仮処分を申請。東京地裁がこれを認め、現在はこの大学に通っている。

 〈春日部共栄中の矢口秀樹校長の話〉 中学生は互いに影響しあいながら勉強することが大事。保護者も安心して通わせることを求めている。教団の影響下にないとは言い切れない生徒を入学させれば大きな支障が出る恐れがある。本人に罪はないが、現在の教育環境を守りたい。

asahi.com http://www.asahi.com/edu/news/TKY200603020305.html



実を言えば、私自身がこの記事を見て最初に思い出したのは【ハンセン病患者がホテルに宿泊を断られたケース】でした。とはいえそれはなにも、ハンセン病患者(元患者)がオウム関係者のように恐れられ、差別されている、という意味ではありません。学校長は「保護者の心理」を理由にし、ホテル側も「ほかの宿泊客の理解」を理由にしていた、そこに同じような匂いを嗅いだのです。
オウムということで次に私が思い出したのは、同じオウム(現アーレフ)信徒の【住民票拒否問題】です。そこでもやはり「住民の安心・安全」が転入届拒否の理由になっていますね。

法曹界の判断は一貫しています。松本被告の三女は入学が認められ、自治体の住民票(転入届)不受理は違法行為とされました。おそらく、この次男の件も、司法の場では学校側主張は退けられるでしょう。

人権・・・という問題は、決して簡単ではないのだと思います。
人権を重視する立場の人は、松本被告の子女やアーレフ信徒にも人権を認めるべきでしょう。それは口で述べて終わりというのでなく、もっと身近に、たとえば自分や自分の子供が通う学校に同被告の子女や信徒がいた場合にどうか、自分の隣に教団道場が引っ越して来たらどうか・・・とリアルに想像してみた時に、反対運動もせず差別もせず・・・が確かに実践できると己を信じられるまで、考えてみる必要があるのではないかと思います。
そのように揺るぎなく自己を信じられないのであれば、ハンセン病患者の宿泊を拒否したホテルを責めるのは、なんだか「ズルイ」ような気がするのです。

ハンセン病患者のケースでは、世論は圧倒的にホテル側の無知・無理解(差別)を批判しました。そうして世論の大勢が決まっている中では、ホテル側を批判することは容易でしょう。しかし人権を考える上で本当に重要なのは、今回のように、差別の被害者側が世論の応援を得られない場合、なのだと思います。

私も含め、大抵の日本人は「ズルイ」のではないかと感じています。まあ、ほかの人はともかく、私は自分のズルさを自覚しています。
私が自分をズルイと感じるのは、学校側の言い分もわかってしまうことです。私は、アーレフの転入に反対した地域住民の人々の気持ちも、わかってしまいます。もし、私の子供が通う学校にアーレフの信徒がいて、彼らと息子とが仲良しだったら・・・私は不安に思うと思います。できれば、そういう状況には陥りたくない(=息子と仲良くなって欲しくない)、と率直に思う私自身がいます。それを私は知っています。
松本被告の子女が在籍しているからという理由で子供の受験校を選ぶこと、まではしないと思いますが、子供には入学式の前に、注意するよう言うかもしれません。また「松本被告の子女がいるからこの学校は受験しない(子供に受験させない)」と言う人が、もし万一周囲に実在したとしたら、私はそれを批判することはしないと思います。そういう選択もあるよね・・・と、相槌を打つと思います。
私はそういう人間だということを、私自身は知っています。
だから「学校側の主張は退けられるでしょう」と述べるだけでは済まない「居心地悪さ」を、私自身が感じるのでしょうね。


この問題に、私はまだ決着をつけられていません。
司法の判断がある。それはわかりました。人は親を選ぶことはできないのですから、親を理由に差別されることの理不尽さもわかります。一方で、現状の平穏を乱されたくない、という気持ちも、私にはわかります。
法が不備だ、ということは感じません。オウムが悪い・・・それはもうわかっています。

問題は、法の理念(人権)と、私の皮膚感覚での幸福観とが必ずしも一致していないこと。
そして私の感じる居心地悪さの原因は、両者が相反した場合にどちらを優先させるべきか、私自身が自己の立場を決めかねている・・・ことにあるのだと思います。
理念と、個人の幸福観とが一致しない場合には、後者を優先させればいいのでしょうか? それが大人というものでしょうか。しかしそういう「大人」の集大成としての社会が、個々の差別を許し、大袈裟ですが場合によっては戦争の後押しさえしてしまう・・・こともまた、明らかなような気がします。

難しい問題ですから、今後も折に触れ(BLOGで書くとは限りませんが)、私は考え続けていくと思います。



 
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2006年03月02日

民主党が失ったもの(メール騒動)

メール問題。
28日、永田氏はお詫びの会見をし、民主党も声明を出し、前原代表が陳謝、野田氏は辞任しました。
与党は対応が不十分としてなお攻勢を強めている段階です。

前々回のエントリ【民主が第一野党でいる限り、自民党は安泰です(メール騒動)】
http://yohaku.seesaa.net/article/13776553.html
で私は民主党を批判しましたが、その中身をもう少し説明しておこうと思います。

まず、与党を応援するのか、野党を応援するのか、という二者択一的な判断を、私は取っていません。民主党がどうしようもないダメ野党だったら自民党を応援するのか、と問われれば、私の答えはNOです。
メール一本ですっかり霞んでしまいましたが四点セット
◇耐震偽装問題・・・設計士が自己の業務を全うできなかった理由はなにか、なにがそれを許したのか。システムに問題はないのか。システムのどこをどう直せば少なくとも今よりマシな建築物ができるか。そのシステムを概観し、制御すべき国交省(行政)と民間検査機関を含めた建築業界との癒着の構造はないのか。

◇ライブドア問題・・・実体を伴わない企業が易々と「錬金術」で時価を上げてしまえたのはなぜか。証券関連法、金融システムに問題はないのか、錬金術師達と政界との間に癒着はなかったのか、あったとしたら政治家達は彼らになにを与え、なにを見返りに得ていたか。そして株価暴落で問われる「自己責任」の中身とはなにか。国民はなにを覚悟し、なにを期待していいのか。

◇米国産牛肉輸入再開問題・・・最初の再開時の経緯に不透明な点はなかったか、政府はなぜ世論の反対を押し切ったのか、海外からの圧力に屈したのではないか。そしてなぜ米国は約束を守らなかったか、今後守らせるためにはなにが必要か。その方策はあるのか。誰が責任を持って海外生産の牛肉の安全性を保証するのか。それとも保証は不可能なのか。

◇三十年来の防衛施設庁官製談合問題・・・これまで国民の税金はどういう使われ方をしてきたか。談合をなくすにはどうすればいいか、政府は本当にそれをやる気があるのか。


思いつくままに書きましたが、これら四点セットは結局のところ、日本の「社会システム」自体の不備に根ざす問題です。
そしてこの社会システムは言うまでもなく、現在も政権にある与党・自民党が中心になって作り上げたものです。その自民党は今、「官から民へ」を標榜し、道州制の導入なども視野に、更なる自由化・小さな政府化を目指そうとしています。
小さな政府が「なにもしない政府」では困ります。耐震強度偽装は民間検査機関であろうと公の検査機関であろうと行われたであろう(実際行われていた)というのが私の認識です。しかし今後政府がより小さくなる中で、事件の再発を防止するためにはなにが必要なのか・・・という議論は、「小さな政府化」議論とは切っても切れない関係にあるはずです。再発を防ぐためには今より強大な公(つまり大きな政府)が必要なのか、それとも小さな政府でも防止は可能なのか、そういう議論も大切です。また、被害者への補償・救済の観点も重要でしょう。偽装マンションを買わされた善意の住民を公が税金で救済する、となったらとんでもないことです。消費税は50%程度に上げなくてはならないでしょう。なにしろ偽装マンションだけでなく、すでに始まったアスベスト被害者への補償や、もしかしたら今後発生するかもしれないBSE被害者・・・などへの救済も考えなくてはなりませんからね。

つまり、小さな政府を実現するためには、公の適正・厳格な社会システム構築が必要不可欠なのです。耐震偽装問題なら、偽装が不可能なシステムと、もし偽装が起きてしまった場合の税金によらない(民=業界による)被害者救済の仕組みが必要です。BSE問題も同様。最大限の安全性を政府が保証する仕組みと、それが万一破られた場合の責任の取り方・・・までが大切です。
そういう時期に、官製談合が延々と続いていた実態が暴露されました。小さな政府は官製談合とどう向き合うのですか? 消費税が上がる一方で福祉は切り捨てられ、官製談合と天下りが延々と続く・・・政府なら真っ平御免です。
公の関与する範囲が狭まる・・・できる限り民間の競争にさらす・・・となれば、必然的に格差は広がります。それ自体は仕方のないことと私個人は捉えています。しかしその前提には、公正なルールの適用がなくてはなりません。ライブドア事件・・・。ルールはどこまで透明でしたか? 抜け道や穴が多すぎませんか? それを埋める努力を行政は真摯に行っていてくれるのでしょうか。

私は今、日本は大きな曲がり角に来ていると感じています。今後の近いうちに憲法改正が議題に上がるかもしれません。自衛隊の位置付けも変わるかもしれません。皇室典範も変わり天皇観が大変革するかもしれません。県はなくなり道州制になるかもしれません。そういう大切な時期に、日本は今、来ています。
小さな政府化は、おそらくこのまま進むでしょう。自民党を批判し、小さな政府化を拒む立場があってもいい、と思います。それは社民党や共産党がしてくれればいいでしょう。
ただし、反対し、玉砕するだけでは困ります。
どうせ小さな政府にならざるを得ないのなら、せめてできるだけ良いシステムを作って欲しいのです。そのために、これまで日本を主導してきた自民党にすべてお任せというのでなく、どこがどうまずいのかを指摘し、より良い修正に導いてくれるような、価値ある批判者を私は期待しています。それは改憲などほかの問題にも通ずることです。

私が二大政党の片側となった民主党に期待したのは、そういう役割でした。
前原党首の対案路線も、私は批判しません。結果として自民党と似た政策になったとしても、それが真摯に日本の未来像を考えた上での結論なら、かまわないと思います。大事なのは、日本の社会システムを構築する力、なのだと思います。政治家の役割とは本来、それだったのではないでしょうか。

自民党の作り上げたシステムに、私は決して同意しているわけではありません。
むしろ疑問を持ち、批判的であるからこそ、別のシステムを呈示し、我々に選択のチャンスを与えてくれる政党を、心底から待望しているのです。


それなのに・・・。この極めて大切な今の時期に・・・!
今回の国会質疑で民主党がしたことはなんでしょうか?
与党幹事長の送金疑惑を追及することも、確かに無意味ではないでしょう。しかし私に言わせれば、政治家個人の送金(献金?)疑惑など四点セットの前ではあまりに小さな問題です。幹事長を失脚させることと、日本の未来像を描き出すことと、どちらが重要ですか?
私の感覚では、メール問題にかける時間など1〜2時間で十分です。それがもし根も葉もある事実なら、暇でスキャンダルに飢えたジャーナリストや、それこそネットで活躍する敏腕ブロガー諸氏が、放っておいても追及してくれるでしょう。政治家の役割は献金疑惑の追及ではないはずです。
そんな些細な問題より、官製談合の実態解明や、耐震偽装問題への政府の取り組みの問題点を、じっくり炙りだして欲しかったのです。それこそが真の野党の役割ではないでしょうか?

私が思うに、前原民主党は「日本をどうするか」より「自民党をどう攻めるか」に力点を置きすぎたのです。国民の立場に立てば、与党が自民であろうが民主であろうがどうでもよいことです。どの政党でも良いから、「日本をより良い方向へ導いてくれそう」な政党に票を投じる、それが有権者の心理ではないでしょうか。
政権交代を狙うというなら尚更、民主党は「日本をどうするか」を描き出すべきでした。敵(自民党)を攻めるのは二番目で良いのです。
その優先順位が、決定的におかしい。これが今の民主党です。今回のメール騒動では、それが否応なく明らかになりました。もし優先順位がきっちりしていれば、メールの信憑性を問われた早期、まだ傷も浅いうちに素早く引き返す決断ができたはずです。
国会の質疑時間は国民全体の共有財産でもあります。そうした視点も、まったく欠けていました。前原民主党の目に映っているのは「国民」ではなく、まず「自分=民主党」次に「敵=自民党」、一番最後に「有権者」です。これははっきりわかりました。

そして最後に前原氏です。彼には心底失望しました。期待していただけに、脱力感で立ち上がれない思いです(大袈裟!)
これが国会の場で、本当に良かったです。考えてもみてください。もし民主党が政権を取ったら、そして前原氏が総理大臣となり、外交の場で、各国首脳を前にあんなハッタリを言うようなことにでもなれば・・・!
国内の話だから、お詫びや陳謝程度で済みますが、もし外交であんなことをされたら、日本は簡単に吹っ飛んでしまいます。中国、米国、ロシア、EU、イスラム諸国・・・。どの国が相手であっても、あんな人では怖くてとても表に出せません。大局観がまるでなく、手持ちカードの確認もせずにその場の勢いで突っ走り、かつ周囲の忠告にも耳を貸さず、しかも態度だけは妙に迫力があるのです。最悪です・・・(困

政治は政治なのです。
「巨悪がある」・・・。それはおそらく(想像ですが)真実でしょう。しかし国政を預かる政治家が言うことではありません。確たる証拠もなく「巨悪」で政治を動かされてはたまったものではないからです。
「巨悪がある」・・・だから「中国は脅威」ですか? イラクでは? 「巨悪がある」だから米国と手を組むのですか? あるいは逆に手を切るのですか? なにも材料がないのに、「巨悪」というイメージで突っ走り、それを理解せよと国民に求められても困るのです。
私が言いたいのは、発想があまりにお子様だということです。素人並です。とても政治家とは思えません。そうした「巨悪」こそ、ジャーナリストや無償で勤勉に活躍する一般ブロガー諸氏に任せておけばよいじゃありませんか。有権者が議員バッジを預けた政治家達に望むのは、献金疑惑追及でも「巨悪」でもなく、「政治」なのです。

この点で、自民党の方がずっとまともだ・・・と、思ったことを、私は正直に記しておこうと思います。
自民党の作り上げたシステムは欠陥だらけ穴だらけで、今後もその穴はますます広がるかもしれません。政官業の癒着は甚だしく、政治家諸氏は金太りしているに違いありません。しかしそれでも、民主党よりはマシに「政治」をしている・・・ようにしか見えません。なぜなら民主党は「政治」未満のことしかできていないから。

今回のメール騒動・・・私は終始、非常に哀しい気持ちでいました。
この哀しさは、代表の首が変わった程度では到底埋め合わせできません。

同じような気持ちを味わった有権者は、日本中に大勢いるような気がします。


 
posted by 水無月 at 08:35| Comment(3) | TrackBack(0) | 国内(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月01日

消された日の丸・・・?

知人の日記から知り、驚いたので、この驚きをBLOGで発散します。

先日、荒川静香選手が華麗な演技で金メダルを取ったことは記憶に新しいのですが、この荒川選手、実は日の丸を手にスケートリンクを一周したのだそうです。皆様はご存知でしたか?
問題は
その映像をNHKが意図的と疑われるような仕方で、あえて放映しなかった!?
かもしれないこと。

私がはじめて詳細を知ったサイトはこちら。↓
【福田 逸の備忘録―独断と偏見】(dokudankojiさん)の【信じがたいNHKの偏向】
http://dokuhen.exblog.jp/2750449#p749

こちらにも詳しくまとめてありました。↓
【玄倉川の岸辺】(kurokuragawaさん)の【偏向なのか、それとも無能なのか】
http://blog.goo.ne.jp/kurokuragawa/e/162122f3f429ba5b67e1e2ce7b4ca384

まとめサイト。↓
【荒川静香選手のウイニングスケートを放送しなかったNHKまとめ】(しんいちさん)
http://arakawasizuka.seesaa.net/
(全く同じテンプレでしたので、これまた驚きました 笑)

いや、皆さん情報が早いですね(苦笑
私のまわりだけが無風で、気づくのが遅れました。

荒川選手が金メダルを取ったフリー演技の朝(2006年2月24日 金)、私は仕事をしていました。従ってNHKの生放送は見ていないです。しかし同じ24日の夜七時台から放映された総集編のような番組は、途中から見ることができました。だから荒川選手が表彰台で君が代を口ずさんでいる様子も見ています。
日の丸に関しては、【読売新聞】配信の特集ページで、おそらく土曜日か日曜日に見ています。
http://www.yomiuri.co.jp/torino/graph/glist.htm?ge=1&gr=3
http://www.yomiuri.co.jp/torino/graph/garticle.htm?ge=1&gr=3&id=717
(下は日の丸を手にする荒川選手の美しい写真
 つまり日本の報道機関が一斉にこの件を黙殺したわけではありません)

だから私は、自分は総集編しか見なかったからあいにく見逃したけれども、生放送を見ていた人達は当然、この日の丸を手にしてのウィニング・スケートを視聴しているものと思い込んでいたのです。昨夜になってこの騒ぎを知り、驚きました(汗

しかし落ち着いて考えてみると、これは本当に偏向なのでしょうか・・・ね??
もしこれが思想的な背景を持つ偏向放送だとすると、実に間抜けな話です。今や世界中の情報がインターネットで手に入る時代。まして日の丸・君が代は国内でも過剰なまでにHOTな話題です。私ですら気づいたのですから、日の丸を擁護する立場の人々が読売新聞からでもなんでも、荒川選手が日の丸を手にしている写真に気づかないはずはありません。その人がもし生放送を見ていれば、当然「??」となるでしょう。
つまり、これほどあからさまな偏向放送など無意味であり、不可能である、ということです。かえって大騒ぎになり、ただでさえ批判が多く受信料支払い拒否者が問題になっているというのに、自分で自分の首を絞めるようなものでしょう。そんなことにも気づかないほどNHKの人々って・・・?(謎

私にはNHKに関係する友人も知人もいませんから、内部がどんな雰囲気なのかもまったくわかりません。
ただ言えることは

 これが偏向だとしたら
  → 偏向放送が日本で可能だと判断した時点で致命的にズレている

 これが偏向でない(単なるミス?)としたら
  → 最高の見せ場をカットした時点でメディアとしての感覚が変
  → 放映権絡みの問題であるとしても釈明があるべきでは?(3/1夜追記)

こういうことではないかと思います。
どちらにしても、変なことには変わりありません。
(といって緻密に細密に偏向放送をされても困るわけですが 汗)
(むしろ日の丸擁護派を元気付けるための捨て身の戦法だ、という陰謀論が反日の丸陣営から出てもおかしくはないような・・・?)

なんだか不思議な気分になってきましたが、「皆様のNHK」の大失態には違いないでしょうね。

 
posted by 水無月 at 07:08| Comment(12) | TrackBack(0) | 日記(時事) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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