2006年04月01日

耐震強度偽装物件まとめ

先のエントリ【非・姉歯物件がいっぱい】に樺山構造研究所の中山明英一級建築士からコメントをいただきました。
このような歴史も浅いBLOGをご覧になり、反応をいただけたこと自体、非常に光栄なことと存じますが、それはともかく、中山氏コメントの真意は「早く最新物件をまとめなさい」ということではないかと想像しましたので、早速・・・(ソースは特に断りのない限り、国土交通省公表資料です http://www.mlit.go.jp/kozogiso/index.html)。


【 2006年3月末日時点での偽装物件 】

◇ 姉歯物件


   全調査対象件数・・・・205件


   調査済・・・・・・・・・・・・205件
     誤りあり・・・・・・・・ 99件
      (うち偽装・・・・・・ 98件)
      (うちミス・・・・・・・ 1件)

     誤りなし・・・・・・・・ 91件
     計画中止等・・・・・ 15件

   調査中・・・・・・・・・・・・ 0件


誤りを含む99件の詳細についてはこちち → 【姉歯偽装物件時系列一覧】 3/31現在)


◇ 非姉歯物件

 ○ 姉歯関連業者(木村建設・平成設計・ヒューザー・総研)が関与した物件

   全調査対象件数・・・・581件


   調査済・・・・・・・・・・・・458件
     誤りあり・・・・・・・・・ 6件
      (うち偽装・・・・・・ 3件)
      (うちミス・・・・・・・ 3件)

     誤りなし・・・・・・・・444件
     計画中止等・・・・・・ 8件

   調査中・・・・・・・・・・・・123件


(判明した偽装・ミスの詳細)

  @ サムシング梶i廃業済)による構造計算書の偽装3件

  A 鞄c中テル也構造計画研究所の関与した誤り1件

  B 鰍モなもと設計の関与した誤り1件

  C 本田建築デザイン事務所(廃業)の関与した誤り1件




 ○ 姉歯関連業者の関与していない物件

  D 浅沼良一二級建築士の関与した偽装5件



非・姉歯物件の詳細についてはこちち → 【非・姉歯物件一覧】 3/31現在)

サムシングと田中テル也構造計画研究所に関してはこちらが詳しいです → 【建築よろず相談



【 非姉歯物件をまとめて思うこと 】

◇ 偽装と誤りの境界は・・・?

偽装とされたのは姉歯氏とサムシング仲盛氏の二名です。姉歯氏は故意の偽装を認めていますが、仲盛氏は私の知る限りでは偽装を否定し、書類提出上の不備、と主張していたはずです(その後の報道をご存知の方はご一報ください)。
一方で田中氏もまた、偽装でなくミスと主張し、こちらはすんなりと認められています。国交省の公式発表では、田中テル也構造計画研究所の関与した「セントレジアス鶴見」は同研究所の設計ミスと日本ERIの審査ミス、二重の誤りによって耐震基準を満たさない、とされています。しかし田中テル也構造計画研究所の設計したものはQu/Qun値が0.64なのですよね・・・。サムシング物件の同値は0.85〜1.0以上です。しかも田中氏は現役の構造専門家・・・のはず。

住人や建築主の立場に立てば、それが故意の偽装であろうとミス(誤り)であろうと、受ける被害に変わりはありません。悪意のないミスだから許せる・・・なんてものではないでしょう。数字ばかりが一人歩きしている感のあるQu/Qun値ですが、やはりこれを目安にするしかないのが現状だと思います。そのQu/Qun値を見ると明らかに、偽装とされる仲盛氏より、田中氏の作品の方が「酷い」のです。
にもかかわらず、「酷い」設計をした構造建築士は「誤り」だからお咎めなし・・・? 報道によれば田中テル也構造計画研究所のほかの設計物件に関しては、国交省の要請で自治体による調査が進んでいるそうですから、今後の調査を待ちたいと思います。

なお、それが偽装であろうとミスであろうと、結果として重大な誤りを見逃した設計元各社にも、他物件に関しての厳正な調査が行われることを希望します。


◇ 誤りと設計思想の境界は・・・?

同じことは熊本県で「誤り」の発覚した、ふなもと設計、本田建築デザイン事務所についても言えます。二件とも「誤り」扱いですが、熊本県公式発表を見ると、「設計者と県の見解が分かれたため、構造評価委員会に工学的な見地からの意見を求めた(ところ、県の見解が正しいとされた)」とあるように、そもそも構造や設計の考え方のレベルでの問題のようです。

今回は県の見解が正しいとされた・・・では、ほかの場合は? となるのは当然の成り行きでしょう。設計が、設計者の考え方(設計思想)によって具体化されてゆくものである、ことはわかります。けれども、その設計思想がこれほど設計者個人に依存し、物件ごとに見解が検証者と真っ向から対立することもありうるような、あやふやなもの・・・だったとは知りませんでした。

なんとも怖い話ですね。
怖い・・・のは、本田建築デザイン事務所構造担当の「ベルメゾン・大津」が、Qu/Qun値=0.54とされているからです。現状では、同値が0.50を切ると一律に建て直しを迫られるわけですから、住人の方にとっては、0.54という数字は首の皮一枚で繋がったような気がするはずです。そういう数字が、設計者の考え方ひとつで出てしまう・・・ということ。これが怖いと思うのです。

本田建築デザイン事務所が特別能力が低かった・・・というのならわかりますが、もしそうでないのなら、この怖さは建築や設計そのものに関わる怖さ、ということになるような気がします。


◇ 偽装がなかった件について・・・

冒頭でも触れたように、私は中山氏本人からコメントをいただいたわけですが、僭越ながら、中山氏のお気持ちは想像できるような気がしました。というのも、私は先のエントリにて「非・姉歯物件」として報道済のものをまとめた中に、同氏と中山構造研究所の実名を挙げていたからです。

しかしながら当エントリ記述(2006年3月末)時点では、国交省でも熊本県でも、中山構造研究所の関与した強度偽装物件は一件も発表されていません。つまり同研究所は(現時点では)無実というわけです。
2006年5月24日、熊本市の発表により、市内の同研究所設計の全件について耐震基準を満たすことが確認されました。報道資料は【非・姉歯物件がいっぱい】※補注1をご覧下さい。(5月31日追記)


樺山構造研究所(中山明英代表)の主張はこちら → 【平成18年2月13日報道発表概要

「偽装が発見された」ことは大々的に報道するメディアも、「偽装がなかった」ことまでは報道してくれません。一度名前が公表されてしまうと、傷ついた名誉を回復するのは困難という実例ですが、当BLOGがささやかでも、名誉回復のための一助になれば・・・と祈っています。

 
posted by 水無月 at 17:05| Comment(8) | TrackBack(1) |   ◇耐震強度偽装問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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