2005年12月29日

渡辺朋幸氏という人

一生懸命時間を遣り繰りしているのですが、なかなか十分にBLOGへ時間を割くことができません。おそらく年内は今夜が最後のチャンスと思われますので、がんばって更新してみます(笑



【 データ 1 イーホームズ社藤田氏 】


【イーホームズ社 公式ホームページ】
http://www.ehomes.co.jp/SITE1PUB/sun/6/news/report70.html?t=1132554461326
http://www.ehomes.co.jp/SITE1PUB/sun/6/news/report60.html?t=1132554461327

上で述べられている内容のうち、重要と思われる点を以下のテーブルに要約します。
この内容はすべてイーホームズ社藤田東吾社長の証言である点をお含みおきください。藤田氏またはイーホームズ社社員は以下のように記憶し証言している、ということです(ただし括弧書き管理人注とした部分を除く)。


@ アトラス設計社渡辺朋幸代表の行動・発言

 ◇2005年10月18日 イーホームズ社へ電話。同社社員が受ける。
  ・ 「『北千住』の物件に構造的に疑義がある」と発言。
 (※管理人注 渡辺氏によればこれに先立つ10月14日の時点でイーホームズ社に電話していた。【読売新聞】http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe5500/news/20051205i308.htm

 ◇10月21日 同社を訪れ、同社の構造担当部長と課長に会う。
  ・ 『北千住』の物件で具体的な偽造の箇所を指摘。
  ・ 「『北千住』物件に対し「計画変更確認」を行えばよい」と発言。→A
  ・ 2年半前の『グランドステージ稲城』も偽造であることを指摘。→B
  ・ 「『稲城』物件を公表しなければマスコミに通報する」と発言。

 (◇10月26日 イーホームズ社、国土交通省へメール通報)
 (◇11月10日 千葉県が姉歯建築設計事務所へ立入調査)
 (◇11月17日 国土交通省が偽装の事実を公表)

 ◇11月21日 渡辺氏イーホームズ社へ。藤田氏と初対面。
  ・ 「姉歯さんが偽造をしていたことを御社に伝えたのは私だということを知っていましたか?この経緯を公表しないのは良くなくはありませんか?」と発言。
  ・ 「偽造に関しては、今から約1年ほど前に、日本ERIで確認を下ろした物件の施工に際し、施工会社から設計内容がおかしいので構造設計の内容を調べてほしいと言う依頼があった。その結果、姉歯設計事務所が偽造をしていたことを知り、技術者として激しい怒りを覚えた。偽造について日本ERI社に対し指摘したにも関わらず公表されずに隠されてしまった。あの時に公表されていたらその後の被害は防げたはずだ。そして、近頃、イーホームズでも姉歯設計事務所が関与する物件がいくつかあると聞いたので気をつけられたし、と伝えた」と発言。
(※管理人注 約一年前の物件とは「港区赤羽根橋」のマンションのこと)

 ◇12月7日 国土交通省参考人質疑
  ・ 渡辺氏は日本ERI社鈴木氏を「とても意識」し「言動が不自然」だった。
(※管理人注 日本ERIが「港区赤羽根橋」物件を計画変更確認で処理したことに対し、渡辺氏は「(違法物件が建てられなくて)良かったと思った」と発言しています。この発言と、それ以前の渡辺氏の発言「日本ERIは事件を隠蔽した」との間には開きがありますから、それをもって藤田氏は「不自然」と感じたのではないかと思います)
(※管理人注 渡辺氏はまた、次のような答弁もしてしています。「一度目に気づいたのは、一年半前に港区(赤羽根橋)の物件で、私が意匠事務所(=千葉設計)さんから構造の監理を委託されました。そのときに、図面と計算書を見比べて発見しました。二度目に発見したのが、施工会社の志多組さんから、北千住の物件で鉄筋が少ないので調べてほしいと依頼を受けました。図面を見ておかしいと思ったので、計算書を取り寄せてもらうようにお願いして、そのとき、計算したのが姉歯さんだと聞いて、とても驚いた次第です」)

 ◇12月15日 藤田氏がアトラス設計へ渡辺氏を訪ねる。
  ・ 渡辺氏、上記の10月19日のA、Bが事実と認める。


A 藤田氏の疑惑

渡辺氏の目的は、イーホームズ社に「北千住」物件の計画変更確認をさせることだったのではないか。数日後の10月24日に国土交通省からイーホームズ社へ「予告なしで緊急立ち入り検査」が入っているが、もし違法な計画変更確認を行っていれば、そこで発覚し、イーホームズ社は「即刻指定取り消し、全ての資料も没収」されていたに違いない。
イーホームズ社(と姉歯秀次元建築士)を陥れ、偽装事件を発覚前から闇に葬ろうとするなんらかの力があったと思う・・・。


B 渡辺氏・志多組に関して(引用)

「渡辺氏の話などから、志多組は宮崎県の地場最大の中堅ゼネコンです。熊本の木村建設のように、宮崎の志多組というような関係で九州圏では競争が激しい関係だそうです。木村と姉歯氏の関係のように、志多組と渡辺氏という仕事の依頼を受ける関係のようなものです。」



イーホームズ社公式HP内における上記の藤田証言を読んで、私が最も興味を惹かれたのは渡辺氏の行動の不可解さでした。渡辺氏は本当に、藤田氏の疑うように、イーホームズ社を陥れるため、どこかから遣わされた使者だったのでしょうか?
もしそうだとすると、「『稲城』物件を公表しなければマスコミに通報する」と渡辺氏が発言したのはなぜでしょう。説明できません。この発言が示す事実は、素直に考えれば次の二点です。

 ◇1 渡辺氏は二年半前の「稲城」物件の偽装を知っていた。
 ◇2 渡辺氏は「稲城」物件の偽装の事実を公表したがっている。

◇1から、藤田氏は、渡辺氏が偽装関与組織(?)の一員であろう、という方向へ想像力を働かせたのでしょう。しかしその想像は、どう考えても◇2とは矛盾します。「闇の勢力」がもし存在するとして、彼らが事件を表沙汰にしたくないのであれば、「マスコミに公表」されて困るのは、ほかならぬ彼ら自身のはずだからです。

私はここから、今回の渡辺氏の行動は組織的な指示の下での行為でなく、渡辺氏自身の個人的な動機に基づくものだと考えました。
そもそも、「マスコミへ通報する」とは、バックのある人間が口にする言葉ではありません。ほかに誰も味方がいない人間が、最後の手段で言うセリフですからね。

では、渡辺氏の目的は事実の公表そのものだったのでしょうか。
けれども、そうすると今度は「『北千住』物件に対し「計画変更確認」を行えばよい」と示唆したことが理屈に合いません。もし渡辺氏が不正を憎む正義の設計士であるなら、なぜ日本ERIと同じ「隠蔽」であり「不正」であるはずの計画変更確認を勧めたのか・・・。
私はこの「理屈の合わなさ」自体からも、渡辺氏が個人で行動していることを確信したのですが(個人だからこそ、会話の中で態度が揺れてしまうということもありそうです)、とりあえずまだ、謎は謎としておきましょう。ただ、この藤田証言だけからでも、渡辺氏という人が複雑な動機を胸に秘めてイーホームズ社を訪れたのだろう、ということは推測できると思います。



【 データ 2 渡辺氏と志多組と・・・ 】


前項の藤田氏証言から、渡辺氏と志多組との間に結びつきがありそうだということがわかります。
では、渡辺氏や志多組と偽装事件とはどういう関係にあるのでしょう。それを次に整理してみたいと思います。


◇1996年頃  姉歯氏と木村建設が九州の鉄骨業者の紹介で知り合う。

◇1998年? 「グランドステージ池上」建築確認
  現時点で判明している最古の偽装物件であり、かつ、木村建設、ヒューザーの関わった偽装物件の中でも最古のもの。
  建築主=ヒューザー、設計者=下河辺建築設計研究所、構造設計=姉歯建築設計事務所、施工者=木村建設、建築確認=大田区。

◇2003年2月 「グランドステージ稲城」建築確認
  現時点で管理人の知り得た最古の志多組施工のヒューザー物件。偽装。
  建築主=ヒューザー、設計者=スペースワン建築研究所、 構造設計=姉歯建築設計事務所、施工者=志多組、建築確認=イーホームズ。

◇2003年12月 「グランドステージ川崎」施工
  建築主=ヒューザー、設計者=下河辺建築設計事務所、構造設計=アトラス設計(渡辺氏)、施工者=志多組、建築確認=?
  渡辺氏の構造設計で偽装はなし。

◇2004年1月 「港区赤羽根橋」のマンション建築確認
  渡辺氏がはじめて姉歯氏の偽装を知ったと公式に認めている物件。
  建築主=?、設計者=千葉設計、 構造設計=姉歯氏から渡辺氏へ変更、施工者=木村建設?、建築確認=日本ERI。
  当初この物件には、元請の千葉設計の下、アトラス設計(渡辺氏)が構造担当として関わっていた。が、途中で施主の意向、つまり工費を下げたいということから、総研・木村建設・平成設計の三者が千葉設計を訪れ、構造設計を姉歯氏に替えることとなった(渡辺氏は仕事を横取りされた格好)。
  出来上がった構造設計書を千葉設計は(千葉設計HPによれば「念のため」、報道によれば「ビルの総工費が約7族円から約3000万円も安くなったことを不審に思った」ため)、アトラス社渡辺氏に検証するよう依頼した。こうして渡辺氏は姉歯氏の計算書偽造を知る。
【千葉設計】http://www.chiba-aa.jp/kinkyu/kinkyu1207.htm
【読売新聞】http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe5500/news/20051201i201.htm

◇2004年3月 「港区赤羽根橋」マンションに関し、千葉設計と渡辺氏が総研・木村建設・平成設計・姉歯氏と会議。偽装行為を追及。

◇2004年4月 「港区赤羽根橋」マンションに関し、日本ERIは「計算ミス」として計画変更確認処理。この時の構造設計書は渡辺氏の計算し直したものだった。渡辺氏は日本ERIに「姉歯氏がこれを他でやっていたら大変なことになりますよ」と伝えるも無視される。

◇2005年10月 「グランドステージ北千住」建築確認
  建築主=ヒューザー、設計者=スペースワン建築研究所、構造設計=姉歯建築設計事務所、施工者=未定、建築確認=イーホームズ。
  施工者は公式には未定のはずだが、志多組との情報がある。情報の出所は渡辺氏自身で、上記別テーブル内既述の通り、12月7日国会参考人質疑にて「施工会社の志多組さん」と答えている。



上記の内容に、前項で書いた藤田証言を加えてみます。つまり

 ◇3 木村建設と志多組は同じ九州の中堅ゼネコンでライバル関係であった
 ◇4 渡辺氏は(木村建設にとっての姉歯氏のように)志多組から仕事をもらう立場であった

ここまで整理すると、私には、渡辺氏の胸中が理解できる気がするのですが・・・どうでしょう?(笑


つまり、志多組と木村建設はライバル関係だったのです。それは当然、グランドステージシリーズで大当たりしたヒューザー物件受注競争においても、微妙な影を落としていたはずです。
実際には、大きく報道されている通り、ヒューザー物件の多くは木村建設が受注しています。
もう少し正確に言うと、1998年確認の「池上」物件以降、ヒューザー物件の多くに木村建設が関与するようになりました。名義貸し(元請けからの丸投げ)分を合わせると、その数はさらに増えます。おそらく30件を下ることはないでしょう。
一方の志多組は、「稲城」「川崎」「北千住」の3件しか(今のところ判明分では)、関与できていません。そして姉歯氏の関与した2件は偽装物件であり、渡辺氏の設計した「川崎」はシロでした。

志多組は、木村建設がなぜこれほど急成長できたのか、その経済設計の秘密を知っていたのでしょうか? あるいは、知ろうと努力し、もしそこに秘密の知恵があるなら学び(盗み)たいということも、もしかしたら考えたかもしれませんね。
まあ、それはどちらでもいいのですが、私が想像するには、おそらく志多組は、「稲城」偽装物件を施工した後で、お抱え構造設計士の渡辺氏に、姉歯並の「経済設計」はできないかと持ちかけたに違いないと思うのです。つまり、「稲城」を施工した体験で、木村建設の強さの秘密(の一端)が構造設計にあることに気づき、それが偽装とまで知ったかどうかはともかく、次の姉歯氏非関与「川崎」物件では、渡辺氏に同じレベルの「経済設計」を依頼(要求)した、のだと。
志多組が企業として木村建設に対抗してゆくつもりなら、それは当然のことのように思えます。
構造設計士の立場は弱く、競争は厳しいと聞きます。施工者からの要求があれば、渡辺氏も仕事を失うまいと必死になるでしょう。そうして姉歯式設計(「稲城」)を分析する中で、あるいは志多組の要求内容を分析する中で、彼は「稲城」の偽装に気づいたのではないでしょうか。

あるいは、もっと単純に考えるなら、志多組にとって初のヒューザー物件であった「稲城」の構造設計書を、志多組もまた千葉設計のように、渡辺氏に検証依頼したのかもしれません。実際、「北千住」の物件では、渡辺氏は志多組から依頼されて姉歯氏の設計書を見た、と証言しているのですから。


◇1で藤田氏が呈示した疑問、なぜ渡辺氏は「稲城」物件の偽造を知っていたか、の答えは、志多組にあると思います。
志多組経由で、彼は真実を知ったのでしょう。
もっとも、それがいつのことか、まではわかりません。もし、「稲城」の施工段階で志多組が渡辺氏に検証を依頼していたなら、彼は二年半前に知ったのでしょうし、「川崎」の設計段階で知ったのであれば、約二年前ということになります。


藤田氏は、「稲城」の偽装を知りつつこれまで黙っていた渡辺氏の「正義感」に疑問を呈していますが、おそらく志多組の意向もあったものと私は想像しています。千葉設計は真実を知ると総研や木村建設を呼び出して事実をはっきりさせましたが、「北千住」の件ではっきり真実を知ったはずの志多組が、これまで表立って動いた形跡は一切ありません・・・。
志多組は、「気づいても気づかないふりをする」道を選んだのだと思います。少なくとも、「北千住」ではそうでしたから、それ以前の「稲城」物件でも、もし気づいたとしてもなにもしないことを選んだだろう、と想像できるわけです。
志多組にとってはライバル会社、木村建設の「お抱え経済設計士」の不法行為。これを表沙汰にすることはいたずらに波風を立て、双方にとって害が多いと判断した、というような「大人の」(もしくは「裏社会」の)知恵が働いたような気がします。
とにかく、志多組は沈黙していたいらしいのですね。とすると、そういう施工者の下にいた渡辺氏も、また沈黙を余儀なくされたのではないか、とする推測は、それほど意外ではないでしょう。



【 渡辺氏 VS 姉歯氏 】 〜 構造設計界の死闘 〜


さて、このようにして「稲城」の偽装を知っていた渡辺氏ですが、一年半前の「港区赤羽根橋」のマンション物件で、またも姉歯氏とぶつかってしまうわけです。これはもう、渡辺氏が姉歯氏と同じく関東周辺で活躍する構造設計士であった以上、もはや避けようのない宿命だったのかもしれません。


「アトラス設計は2005年10月にまたも同じようなことを別の場所で遭遇することになり、今回の告発へ至った、と渡辺氏から聞いております。これがまた別の建築士であったら、たぶん今でも闇の中かも知れません。何かこのあたりにアトラス設計の運命のようなものを感じます。」
(【千葉設計】HPより http://www.chiba-aa.jp/kinkyu/kinkyu1207.htm


千葉設計の千葉氏は、これのさらに一年後の「北千住」物件について上記のように述べていますが、千葉設計が(志多組と違って)事態の黙殺に向かわなかったのは、渡辺氏にとって大いなる救いとなったはずです。

渡辺氏の気持ちになれば、姉歯氏を許せない思いが限界まできていたことでしょう。なにしろ姉歯氏は、「港区赤羽根橋」物件での渡辺氏の仕事を奪ったのですからね。それも、違法な計算書偽造という手口によって。


「姉歯設計事務所が偽造をしていたことを知り、技術者として激しい怒りを覚えた。偽造について日本ERI社に対し指摘したにも関わらず公表されずに隠されてしまった。あの時に公表されていたらその後の被害は防げたはずだ。」
(【イーホームズ】HPより 渡辺氏11月21日藤田氏に語る)


この怒りは、渡辺氏が姉歯氏と同じ構造専門の設計士であり、過去に仕事を奪われていた、という事実まで知って、はじめて正確に理解できるのだと思います。
藤田氏は、おそらくそれを知らないでいたのでしょう。だから、この怒りを清廉な技術者の正義の怒り、と解釈してしまった・・・。ゆえに、「計画変更確認を行えばよい」という発言が理解できないのです。
渡辺氏が、計画変更確認を示唆したのは当然のことです。「港区赤羽根橋」の物件では、ほかならぬ渡辺氏が、自らの設計で日本ERIから計画変更確認を受け、そのまま構造担当者の地位に返り咲いたのですから。

計画変更確認が違法であるとか不法である、ということは知識としては知っていたかもしれませんが、渡辺氏の頭の中では「悪いこと」ではなかったはずです。彼もそれによって恩恵を受けているのですからね。従って日本ERIが「港区赤羽根橋」の物件に関して計画変更確認を行ったことは、渡辺氏にとって「善いこと」なのです。
ではなぜ、彼は日本ERIを「隠蔽した」と責めるのか。
これももはや明確ではないでしょうか。
彼が許せないのは「港区赤羽根橋」以降の物件でも姉歯氏が偽造を続けていること、です。日本ERIが事態を公表してくれれば、姉歯氏は設計の仕事は続けられないはず・・・。そうすれば渡辺氏の仕事が奪われる危険もなかったでしょう。にもかかわらず姉歯氏は偽造計算書を書き続け、現に「北千住」の物件では志多組施工なのに姉歯氏が構造計算をしている!のです。

ここまで考えると「あの時に公表されていたらその後の被害は防げたはずだ」という渡辺氏の発言も、多義的に読めてくるから不思議です。「被害」を受けた人の中には、単に一般の住宅購入者だけでなく、彼自身もが含まれていたのかもしれません。
渡辺氏は抽象的に、住宅購入者の被害や正義の憤りを語っているつもりで、実は自身の被害や怒りを表現していたのではないでしょうか。



【 渡辺氏 VS 藤田氏 】 〜 合わない視線 〜


渡辺氏がイーホームズへ電話をかけ、数日後には単身乗り込んで事情を説明した・・・。この動機も、もう十分理解できることと思います。
志多組は、千葉設計と違って、事態を公開しないのです。千葉設計は、偽造であることを知ったのちは、構造担当をアトラス社へ戻してくれました。しかし志多組はそれをし(てくれ)ない。となれば、今後志多組系の仕事は大幅に減るかもしれません。・・・志多組は動かない。日本ERIも動いてくれない。ならば自分で動くしかないじゃないですか!

渡辺氏の告発は、こうした文脈の中でこそ、はじめて理解できると思います。
姉歯式(偽装)経済設計をこれ以上のさばらせておけば、渡辺氏の仕事は減る一方です。対抗するにはそれこそ計算書偽造に手を染めねばならないでしょう。しかしもちろん渡辺氏に、それだけはできないのです。
正しい設計をしている自分がなぜ冷遇され、偽造設計士が高級外車を二台も三台も乗り回しているのか・・・。
渡辺氏がイーホームズへ姉歯氏を告発した目的は、今後これ以上偽装設計をさせないこと、できれば姉歯氏の設計士生命を絶つこと・・・あたりにあったと思います。それが告発の動機なのです。

将来のため・・・。
日本の建築界の将来のため、構造設計士全体の将来のため、しかし実は我が身の将来のため、だったのだと思います。姉歯氏が不法な設計をやめるか、設計業界から足を洗うかすれば、おそらくそれで渡辺氏は満足だったのでしょう。けれどもそこには、すでに建てられてしまっている違法建築物に住まわされている住人達がどうなるか、という過去への視点はありませんでした。そしてこの点で、藤田氏と渡辺氏とは決定的に違っていたのです。

渡辺氏が当初、藤田氏(イーホームズ社)に期待していたのは、「北千住」物件を差し戻すこと、だったのではないでしょうか。確認機関であるイーホームズからNGが出れば、志多組は姉歯氏を使うことを諦め、渡辺氏に構造設計を依頼してくるかもしれません。私は、渡辺氏はその可能性は相当高いと踏んでいたように思います。
計画変更確認を示唆したのは、「港区赤羽根橋」物件と同様、自分が姉歯氏の後釜に座ることを念頭に置いていたからなのでしょう。そして「稲城物件を公表しろ」と迫ったのは、あくまで志多組や総研に対して公表せよと迫ったものと解釈できます。国に公表すれば自動的にマスコミにも公表されるわけですから、後半の「でなければマスコミに通報する」というのが辻褄が合いませんから。
つまり渡辺氏は、イーホームズ → 総研・志多組 のルートで、圧力をかけることを望んでいたのです。なんの圧力かって? 当然、もう姉歯氏を使わないようにという圧力です。

要するに渡辺氏は、千葉設計主導で行われた「港区赤羽根橋」会議の再現を期待していたのです。この会議で姉歯氏は偽装を認め、結果、姉歯氏が奪った仕事は渡辺氏の許へ戻ってきました。今回は志多組が動かないから、イーホームズ社に期待したのです。
けれどもイーホームズ藤田氏は、一介の設計事務所でもなければ、日本ERIや志多組のような「見て見ぬふりが大人の知恵」的な人物でもありませんでした。
藤田氏は渡辺氏抜きでヒューザー・平成設計などと会議をし、事実関係を確認した後は国へ通報してしまいます。

渡辺氏の目論見は大きく外れました(笑
姉歯氏の設計士生命を絶つことはできたかもしれませんが、直接的な利益はなにもありません。「北千住」物件は建築確認取り下げで、もはや変更確認どころでない騒ぎです。
長らく「横浜の設計会社」として匿名を希望し続けた千葉設計とは対照的に、渡辺氏のマスコミへの露出度の多さ・・・が、当初から私は気になっていましたが、それも、こう考えるとなんとなく見えてくるような気がします。
なにしろ渡辺氏は、イーホームズに「勇気ある告発」をした見返りがなにもなかったのですからね(笑
イーホームズが「大人の態度」を取っていれば得られたはずの「北千住」物件の代わりに、せめて社会的な名誉や賞賛を浴びたい・・・と、彼が考えたかどうかはわかりませんが、もしかしたら渡辺氏には、もはや目立つことで宣伝をする道しか残されていなかったのかもしれません。少なくとも、目立たぬことが利益に繋がると判断した千葉設計より追い詰められた立場なのは確かでしょう。
どうやら案外狭いらしい構造設計業界ですから、最初の告発者が渡辺氏だったことは関東周辺の業界内では早くから知られてしまい、その結果、志多組はじめ「大人の」業者達が彼を敬遠する素振りを見せた・・・ということも考えられます。



【 ま と め 】


このように、藤田氏を困惑させ悩ませた渡辺氏の一見不可解な行動・・・は、謎を解こうと周囲を調べるうちに、私には自然と解釈できてしまいました。
渡辺氏は、巨大な陰謀とは対極の位置にいる人物だと思います(笑
彼の視野は狭い。藤田氏よりなお狭いです。おそらく彼は純粋に、彼の目に見える範囲の人々の幸福を願うタイプなのでしょう。

イーホームズ社の関係者が拙文を目にすることがあるとも思えませんが、もしそういう機会があれば、どうぞ藤田社長には、以下のように伝えて欲しいと思います。
「少なくとも渡辺氏は『陰謀』の加担者ではありません。
 彼はあなた同様『純粋な』志を持つ人物と思われます。ただ、あなたよりもほんの少しだけ、視野が狭いか、もしくは見る方向が違っていた・・・かもしれませんが。
 だからこの件に関しては、どうかこれ以上つまらない疑心暗鬼にかかずらうことのありませんように。
 そして事件の再発防止のためには今後なにが必要か、また過去にはなにが必要だったのか、真摯かつ謙虚に熟考することの方を、どうぞよろしくお願いします。(せめて、御社の『悪くなかった』理由を探しだす情熱の1/10程度は、そちらへ割いてくださることを国民一同期待しております)」


さて、ここまで書くうちにとっくに夜が明け、午前中まで終わってしまいそうです(汗
九州の鉄骨業者に関しても書きたかったのですが、それは来年に回すほかないようで・・・。

どうぞ皆様、よいお年をお迎えください。
来年の日本に昇る朝日が、少しでも希望と喜びに満ちた光と感じられますように。



最後に、このエントリを書くのに複数の箇所で以下のサイトを参考にしましたので紹介します。
 【建築よろず相談__耐震強度偽装問題時系列】
  http://www.shou.co.jp/yorozu/naibu/gisou.htm
 【東急不動産・東急リバブル不買運動__耐震強度偽装問題、日本ERI、アトラス設計渡辺朋幸代表】http://rain.prohosting.com/~rain7/eri.htm
 【千葉設計__12月7日の衆院国土交通委「建築物耐震強度偽装問題」参考人質疑において、当社名が実名 にて発言されたことについて】http://www.chiba-aa.jp/kinkyu/kinkyu1207.htm


※関連エントリ

外部ファイル版【姉歯偽装物件時系列一覧
耐震強度偽装問題・・・資料編(12/21現在)


時系列で耐震強度偽装事件を見ると
姉歯秀次氏という人
偽装事件は小さな政府を大きくするか?
耐震強度偽装問題・・・意見・感想編
全裸で自殺・・・の謎 耐震強度偽装問題


posted by 水無月 at 11:48| Comment(2) | TrackBack(4) |   ◇耐震強度偽装問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
水無月さん、
はじめまして。

この記事を読ませて頂いて そういうこと事なんだ、、、!!!とちょっと手を握り締めました。

日本に在住していない為に情報は途切れてしまうし テレビ情報もありませんし ひたすらinternet新聞とかブログを読んでなんとか知ろうとやっています。11月はしばらく日本に帰っていました。この問題がおきてテレビでも大騒ぎでした。それほど 熱心にテレビ報道をみていたわけではないのですが、、
告発した人の意見も出ていました。足元だけでているので名前は公表したくないんだ、程度に見ていました。
こちらに帰ってきて 12月7日の委員会の参考人
召致を 衆議院のページでみたのですが
渡辺氏の発言を聞いてて あ、また新しい告発者がでたんだ、、と最初思いました。同じ人には思えなかった、、、あとで 同じ人と分かってなにか変だな、、という感じが残りました。
一体なにが起きてるんだろうという気持ちも出ていましたので 初めてブログというものを見てみようと思い,水無月さんのページをしりました。
登場人物も多く,ようやく最近ようやく関係図が分かりかけてきたところです。縄文、弥生の時代から妙なコメントがあったとお思いになるやも知れませんが, 勇気をだして書かせて戴きました。
姉歯人物考も丹念に読ませて戴きました。姉歯氏のあの無機質な感じはなんだろうと思っていました。これからも朝起きたら真っ先に水無月さんの
ページを拝見します。情報も無く、ブログも驚きをもって見てる新米ですが 記事楽しみにしています。
失礼しました。



Posted by susuki at 2006年01月16日 07:41

susukiさん、はじめまして。
嬉しいコメントをありがとうございました。
勇気付けられました(笑

海外からですと、なにが起きているかを知るのは確かに大変でしょうね。
実は日本にいてさえも、事件を把握するのは大変だったりします(笑
報道が多すぎ(しかし、ないよりはもちろんマシですが)
しかも相互に矛盾していたり、翌日には否定されたり・・・
ということが続けば、メディアの報道自体をも、一歩引いて
疑うくらいの用心深さが要求されるということでしょうし
一方で元ネタとなるはずの国交省や自治体、関係各社の公表も
時に報道や関係者同士で矛盾していたりして、なにがなにやら??
な状況です(笑

BLOGは、個人が、その個人の持てる責任感の範囲内で
自由に意見発表できる場所、ということだと思います。
個人の(それも匿名の)人間がすることですから
会社の名を背負っての報道のように責任を問われない
そのため自由に、大胆に意見を構築できる一方
曖昧な推測に基づいていたり、ただの思い込みから構成されている
ものも、中にはあるでしょう。情報が錯綜し、多様な意見も
ある中では、どの資料を根拠として持ってくるか、の
違いだけで、全く異なるストーリーを描き出すことも可能です。

そうした中でも、私はできる限り「読んで良かった」と訪問者の皆様に
思ってもらえるような記事を書くことを心がけ
@ 報道や事実関係と、私の個人的な意見(や推測)とを区別し
 推測は推測である旨を前後で断り書きする
A 推測の根拠となる報道や事実関係は可能な限り元URLをつける
の二点を心がけています。
そうして記述した内容が、susukiさんのように受け止めて頂けると
本当に嬉しく、励みになります。

なお、強度偽装問題では(その他の問題でもそうですが)
拙BLOG以上に素晴らしいBLOGやHPも数多くありますから
そうしたものもご覧になって情報を多面的に収集なさると
より正確に、理解が深まるかと思います。

最後に・・・
新記事のUPは、どうがんばっても数日に一度できれば良い方かと
思いますので、お待たせしてしまったら申し訳ありません(汗

そのようなわけですが、是非また遊びに来てくださいね。
ありがとうございました。

Posted by 水無月 at 2006年01月16日 20:45
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