2006年01月19日

東証システム停止

 
【システムの計画停止は適切な判断だった】
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060118/227513/

耐震強度偽装問題を大きく報道させないため、政府は
十七日(阪神淡路大震災の起きた日)
宮崎勤被告の最高裁が行われる日をわざと選んで証人喚問を
行うことに決め、それでも足りないからライブドアの捜索を
同日にぶつけたのだ、という意見も拝見しましたが、??、な
感じです。まあ、私は政府の人間じゃありませんから政府の
思惑など(それが存在したと仮定しても)知りません。
とにかく今の私に見えるのは、耐震強度問題並みの爆弾を
抱え込んじゃったニッポン
の苦りきった、冷や汗タラタラの青い顔です。
これに比べれば靖国は軽い(怒られるかな? 汗)。

耐震強度問題を、黒幕の誰某、政治家の何某がどう・・・という
政治レベルの問題とする意見には、私は違和感を禁じ得ない
のですね。これは確かに政治問題ですが
特定個人の悪を暴くというような、スキャンダルレベルの問題
ではなく、今後住宅行政をどうするのか
小さな政府の補償範囲はどこまでか、公共事業で食えなく
なったゼネコンやその下請けの人々の生活をどうするか
というような、大きく日本の社会システム全体の在り方を
問う問題だ、と、私は認識しています。

国家資格を持つ人間が悪さをした、そういう圧力があり
それが許されてしまう体制だった、というのももちろん大ごと
ですが、そういうことは例えば医師の世界でも起こり得ます。
そして医師と建築士とでは、建築業界の方が日本という国家に
与える影響は大きいのではないか、と私は思っているわけで。
理由は、そこに従事する人間の数、そこで動く金額の多寡です。
日本の平均的な家庭が住宅ローンや家賃に払う金額と
同じく医療費と・・・を比べてみた場合、前者の方が
大きいはずです。
そういう意味で、つまり日本経済に与えるインパクトの大きさで
建築業界の問題は医療の問題より桁違いに大きな問題です。
下手をすれば日本をもう一度「失われた十年」の泥沼に
突き落としかねない、その程度の威力は十分備えた問題だと
感じています。

それはともかく。
今回のライブドア騒動自体はどうでも良いでしょう。
どうでもいいと言っては語弊がありますが、その次に起きた
東証システムの「計画停止」というインパクトの前では
一私企業であるライブドアの先行きなど吹っ飛んでしまった
感があります。
証券システムでの騒ぎ・・・は、確か年内にもありませんでしたっけ?
そう、ジェイコム株の誤発注騒動です。
どうやら我々の社会を支えている目に見えないコンピュータ・
システムというシステムは、我々が期待し、暗黙のうちに
信頼しているよりも、遥かに脆弱なようです。
思えばライブドア自体もIT企業でした。ITに発し、東証システム
という別のコンピュータ問題へと波及する・・・象徴的です。

「 東証のシステムは、1日の約定件数が450万件、同注文件数が900万件まで処理できる設計になっている。ただ、安全を期すため、1日の約定件数が400万件を超えるか、同注文件数が850万件を超えた場合、システムを計画停止させて取引市場を強制停止させると決めている。

 昨年までは、これだけの処理能力で十分だった。例えば、昨年12月で約定件数が最も多かった日で、1日当たり359万件。400万件には届いていない。ところが、ライブドアの強制捜査開始をきっかけに、約定件数は1月17日に382万件まで急増。1月18日はついに400万件を超え、438万件まで達した。」冒頭日経BP記事より

要するに処理能力が450万件、そして去年の段階ですでに
359万件にまで達した実績があった、というのです。
電力需要などを思い起こしてみれば、処理能力値のMAXは
直近一年間の実績MAXの二倍程度は欲しいところです。
電力なども、本当に需要が逼迫するのは真夏の数日程度です。
しかし一度でも供給がストップすれば社会に深刻なダメージを
与えてしまうので、年間のたった数日のために、各電力会社は
巨大な資本を投下して発電所を確保し、それでも困った時には
融通しあえるよう相互に提携しているのです。水も同じ。
しかも水や電力は自然が相手ですから、去年のデータが
有効です。昨年のMAXが(単位はともかく)359だったら
処理能力が450あれば、まあ、安全です、と言えるでしょう。
しかし証券システムは違います。
ネット環境の普及に伴って証券システムに参入する人々の数は
グラフのイメージに喩えるなら気温や年間降水量ではなく
人口増加のグラフに相当するでしょう。
何万年もの長い間停滞と見まごうような微増が続き
それがここ数百年、あるいは数十年、もしくは数年、の間に
爆発的に増えている、というあれです。

そういう、いわば等比級数の世界に、証券システムは突入して
いるのです。そう考えれば、どの年もどの年も、毎年、
前年MAXの二倍程度の処理能力は必要とされるでしょう。
少なくとも、それをやれる(全世界の)層がほぼ全員それを
やり始めた安定(停滞)期に入ったと認識できるまでは。
前年MAXの二倍程度の余裕があっても、年の終わりにはもう
窮屈に感じられる、というような処理件数の増加具合だと
私は予測します。それが今後数年間は続くでしょう。

東証は年内の1月30日までに処理能力450万件を500万件に
増やす計画だそうです。そして年内の早い時期にシステム
全体の処理能力をほぼ二倍弱にする・・・と。
遅すぎます。その頃にはすでに実績MAXが今の二倍になって
いるでしょう。つまり東証の計画では薄氷を踏むような
現在の状態を解消するには、ほど遠い、というわけです。

しかし東証を責めるばかりでも埒が明きません。
真の問題は、コンピュータ・システム自体が
社会から要求されるレベルに達していない、ということでしょう。
東証のような巨大システムとなると、開発にはそれ相当の
時間がかかるものです。
より性能の良いハードなり技術なりが開発されたとして
東証がこれを組み込んだシステムを開発しようとする、
しかしそれが出来上がる頃には、すでに同じ最新技術は
エンドユーザーにも波及効果を与えており、市場の参加者は
当初目論見を上回っていた・・・なんてこともあるでしょう。
証券や金融のように信頼性が厳しく問われる業界では
今後は(すでに今もそうなのですが)本業にかける以上の
労力と開発費用を、システムにかけねばならなくなる、という
ことになるでしょう。
私が当事者なら、気の遠くなるような話です(笑


この東証の問題は、実は東証だけでも、金融だけの問題でも
ないような気がしますね。
典型的には核。
軍事転用の方はおいておき(これ自体も大問題ですが)
純粋な原子力発電だけに限っても、それが本来要求される
安全レベルと、システムが実現可能な安全レベル・・・とは
実は紙一重の、非常に危うい位置にあるのではないかという
気がします。遊び(余裕)の部分がどんどん薄くなっている。
これは広くエネルギー全体にも言えることです。
必要とされるエネルギー量と、供給可能な量との、差。
前者がどんどん後者に追いつき、いつか追い抜いてしまう
のではないか・・・という恐怖。


これは広く考えれば、人間社会(または人類)の
欲望と技術との関係、という古くからの難問でもあるのでしょう。

これまでの日本社会は、なんとかこの古くからの難問を
解決(もしくは先送り)することに一応、成功できていました。
その結果、今では日本社会は安全・安定していることが
当たり前とされていたわけですが、今後は次第に
異常事態が当たり前のように繰り返される、不安定な時代へと
移り変わってゆくのかもしれません。
すでに気候などでは毎年のように「異常気象」と叫ばれ
すっかり異常慣れした感もありますが、人工のシステムに
関しても、同じような認識が、徐々に広まってゆく・・・ような
気がします。突発性の時代・・・へと。

東証システムの問題は、そこまでを示唆しているように思えます。

耐震強度問題との絡みで言えば、ふたつの事件はともに
日本の社会システム全体の在り方を問う(問題点を衝く)
出来事だった・・・と整理できると思います。
激動の時代なのは間違いないでしょうね・・・。

posted by 水無月 at 05:41| Comment(7) | TrackBack(2) | 日記(時事) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
突然で恐縮ですがご招待です
「東証/全面売買停止」に関するクイズを作りました。
「またシステムがらみで売買停止。東証ダウンで日本の株取引の何割に影響が出た? 」
というタイトルの記事です。
解答の選択肢は □約5割 □約7割 □約9割 の3つ
正解は→ http://q-q.at.webry.info/200601/article_49.html
 他にも「雑学クイズ」が300問以上あります。
 お近くへおいでの節は、どうぞ拙宅へもお立ち寄り下さい
(ご迷惑でしたら、お手数ですがコメント、TBの削除をお願いします)
Posted by 素町人@思案橋 at 2006年01月19日 11:09
うんうん、全く、その通りとうなずきながら読みました。

それから、門外漢でよくわからないけど、東証の対応の遅れも、安易に誤発注を出してしまう真剣味の足りないトレーダー(でいいのかな?)、間違いに乗じた利益は戻すって、なんか「仲良しごっこ」の業界、、、たるんでないか?? って疑問です。
ホリエモンが返さないと発言して問題になってたけど、本来はそれがスジでは(道徳的には受け入れられない考えですね)? あとの影響の大きさを考えれば当然かもしれないけど。

Posted by dashi at 2006年01月20日 19:14

コメントをありがとうございます。

>素町人@思案橋さん
 トラックバックをありがとうございました。

>dashiさん
 本来はそれが筋でしょうね。ただ道義的に受け入れられないだけ。
 しかしそうすると、今回のような事件が起きた時に
 一斉にIT株を売ろうとする一般のデイトレーダーさん達の
 行為は道義的にどうなの?? なんて疑問も浮かんできてしまって
 どうやら株(金?)の世界と道義とはとことん相性が悪いようで(笑

 堀江氏はいろいろな意味で新しい人ですよね。
 賛否両論もあるのでしょうけど、彼の発想・・・には
 一方的に責めて事足りるような、それだけではすまないものが
 あったと思います。
 ところで今回も死者が出てしまいましたね。
 これもなにか、裏があるといえばありそうな感じです・・・。

Posted by 水無月 at 2006年01月21日 20:06
水無月さん、こんばんは。
私には、東証の西室泰三会長による、今回の東証のシステム障害に関する発言などは、東証とその傘下のマザーズの上場認定基準のいい加減さや、証券等監視委員会の無能さに、今回の事件での焦点が当たらなくするする為と、ライブドアと同じ絵を描いて、急成長した企業(マザーズ出身の企業)を、既に東証一部に上場させてしまっている事を隠蔽するための、小泉純一郎お得意の「詭弁」と同様に聞こえます。
Posted by スパイラルドラゴン at 2006年01月22日 00:05
スパイラルドラゴンさん、こんにちは!

システム障害に関しては私も、本当にシステムが危うかったのか
どうかは怪しい、という意見を聞きました。
しかしもしスパイラルドラゴンさんのお考えが真相とすると
西室氏ら東証や関係者の認識、物事の大小の考え方は
少なくとも私とはまったく異なりますね。
東証システムの信頼性を損ねる(国外に対しても)ことは
日本経済に取り返しのつかないダメージを与えるような気がします。

>証券等監視委員会の無能さ
証券の世界でも監視する立場の人が無能なのですか・・・!
ああ、実に救われないですね、それは(困

ところで近いうちに当BLOGのリンク欄をもう少しちゃんと充実させようと
考えています。スパイラルドラゴンさんの【らくちんランプ】へも
リンクさせていただきたいと思っていますので、どうかよろしくお願いします。
Posted by 水無月 at 2006年01月22日 07:57
東証にはシステム技術者がいないのではないでしょうか(技術、だけじゃなく、法律面ふくめ)。
おととしだったか、銀行合併にともなうATMシステムでトラブルを起こしましたが、いかにも試験してないな〜、という感じ。ユーザ数や、トラヒック、処理能力を承知しておけば、事前の増設とかフロー制御とかをおこなってみっともない姿をさらけ出さずにスンダでしょうに。負荷試験もおこなっていないのでは?(ロンドンでは分散システムを採用しているとかで、ニッポンのような惨めなことは怒らないでしょう)。技術畑のひとがトップにつきましたが、増設ではなく根本的なシステム改変が必要でしょう。以前、電話のワン切りでシステム停止という事態がありましたが、悪意のユーザなら外部から東証システムを簡単にダウンさせることができるのじゃないか?と思います。偽造事件もしかり(試験をしていない)、ライブドアの株式分割うんぬん(事前に予測されたこと)、もしかり、起こった後で大騒ぎしているだけでなんとも、お粗末、とおもいます。
Posted by yam at 2006年02月08日 20:11


yamさん、こんばんは♪

東証にはシステム技術者がいないのですか・・・。
う〜ん。なんと言っていいやら(苦笑
もう少し危機意識を持ってやって欲しいものだと思います。
耐震偽造問題、ライブドアのお話もされていますが、同感です。新自由主義とかいう怪物潜む荒海に、今後日本も否応なく漕ぎ出でていかねばならないわけですから、備えはきちんとしないとまずいでしょうね。
Posted by 水無月 at 2006年02月09日 01:04
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Excerpt: ●★●●●●● 問題:「東証、全銘柄の売買停止 ライブドア事件で売り殺到」(asahi.com 060118) http://www.asahi.com/business/update/0118..
Weblog: 町人思案橋・クイズ集
Tracked: 2006-01-19 11:40

『日本を決定した百年』とその後
Excerpt: 昨日に引き続き、ライブドア騒動や耐震偽装設計の問題についてです。 この2つの問題は、本当に偶然なのかどうかは定かではありませんが、 たまたま同じ日に大きなニュースとなりました。 だからというわけでは..
Weblog: after 911
Tracked: 2006-01-19 12:12
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