2006年03月02日

民主党が失ったもの(メール騒動)

メール問題。
28日、永田氏はお詫びの会見をし、民主党も声明を出し、前原代表が陳謝、野田氏は辞任しました。
与党は対応が不十分としてなお攻勢を強めている段階です。

前々回のエントリ【民主が第一野党でいる限り、自民党は安泰です(メール騒動)】
http://yohaku.seesaa.net/article/13776553.html
で私は民主党を批判しましたが、その中身をもう少し説明しておこうと思います。

まず、与党を応援するのか、野党を応援するのか、という二者択一的な判断を、私は取っていません。民主党がどうしようもないダメ野党だったら自民党を応援するのか、と問われれば、私の答えはNOです。
メール一本ですっかり霞んでしまいましたが四点セット
◇耐震偽装問題・・・設計士が自己の業務を全うできなかった理由はなにか、なにがそれを許したのか。システムに問題はないのか。システムのどこをどう直せば少なくとも今よりマシな建築物ができるか。そのシステムを概観し、制御すべき国交省(行政)と民間検査機関を含めた建築業界との癒着の構造はないのか。

◇ライブドア問題・・・実体を伴わない企業が易々と「錬金術」で時価を上げてしまえたのはなぜか。証券関連法、金融システムに問題はないのか、錬金術師達と政界との間に癒着はなかったのか、あったとしたら政治家達は彼らになにを与え、なにを見返りに得ていたか。そして株価暴落で問われる「自己責任」の中身とはなにか。国民はなにを覚悟し、なにを期待していいのか。

◇米国産牛肉輸入再開問題・・・最初の再開時の経緯に不透明な点はなかったか、政府はなぜ世論の反対を押し切ったのか、海外からの圧力に屈したのではないか。そしてなぜ米国は約束を守らなかったか、今後守らせるためにはなにが必要か。その方策はあるのか。誰が責任を持って海外生産の牛肉の安全性を保証するのか。それとも保証は不可能なのか。

◇三十年来の防衛施設庁官製談合問題・・・これまで国民の税金はどういう使われ方をしてきたか。談合をなくすにはどうすればいいか、政府は本当にそれをやる気があるのか。


思いつくままに書きましたが、これら四点セットは結局のところ、日本の「社会システム」自体の不備に根ざす問題です。
そしてこの社会システムは言うまでもなく、現在も政権にある与党・自民党が中心になって作り上げたものです。その自民党は今、「官から民へ」を標榜し、道州制の導入なども視野に、更なる自由化・小さな政府化を目指そうとしています。
小さな政府が「なにもしない政府」では困ります。耐震強度偽装は民間検査機関であろうと公の検査機関であろうと行われたであろう(実際行われていた)というのが私の認識です。しかし今後政府がより小さくなる中で、事件の再発を防止するためにはなにが必要なのか・・・という議論は、「小さな政府化」議論とは切っても切れない関係にあるはずです。再発を防ぐためには今より強大な公(つまり大きな政府)が必要なのか、それとも小さな政府でも防止は可能なのか、そういう議論も大切です。また、被害者への補償・救済の観点も重要でしょう。偽装マンションを買わされた善意の住民を公が税金で救済する、となったらとんでもないことです。消費税は50%程度に上げなくてはならないでしょう。なにしろ偽装マンションだけでなく、すでに始まったアスベスト被害者への補償や、もしかしたら今後発生するかもしれないBSE被害者・・・などへの救済も考えなくてはなりませんからね。

つまり、小さな政府を実現するためには、公の適正・厳格な社会システム構築が必要不可欠なのです。耐震偽装問題なら、偽装が不可能なシステムと、もし偽装が起きてしまった場合の税金によらない(民=業界による)被害者救済の仕組みが必要です。BSE問題も同様。最大限の安全性を政府が保証する仕組みと、それが万一破られた場合の責任の取り方・・・までが大切です。
そういう時期に、官製談合が延々と続いていた実態が暴露されました。小さな政府は官製談合とどう向き合うのですか? 消費税が上がる一方で福祉は切り捨てられ、官製談合と天下りが延々と続く・・・政府なら真っ平御免です。
公の関与する範囲が狭まる・・・できる限り民間の競争にさらす・・・となれば、必然的に格差は広がります。それ自体は仕方のないことと私個人は捉えています。しかしその前提には、公正なルールの適用がなくてはなりません。ライブドア事件・・・。ルールはどこまで透明でしたか? 抜け道や穴が多すぎませんか? それを埋める努力を行政は真摯に行っていてくれるのでしょうか。

私は今、日本は大きな曲がり角に来ていると感じています。今後の近いうちに憲法改正が議題に上がるかもしれません。自衛隊の位置付けも変わるかもしれません。皇室典範も変わり天皇観が大変革するかもしれません。県はなくなり道州制になるかもしれません。そういう大切な時期に、日本は今、来ています。
小さな政府化は、おそらくこのまま進むでしょう。自民党を批判し、小さな政府化を拒む立場があってもいい、と思います。それは社民党や共産党がしてくれればいいでしょう。
ただし、反対し、玉砕するだけでは困ります。
どうせ小さな政府にならざるを得ないのなら、せめてできるだけ良いシステムを作って欲しいのです。そのために、これまで日本を主導してきた自民党にすべてお任せというのでなく、どこがどうまずいのかを指摘し、より良い修正に導いてくれるような、価値ある批判者を私は期待しています。それは改憲などほかの問題にも通ずることです。

私が二大政党の片側となった民主党に期待したのは、そういう役割でした。
前原党首の対案路線も、私は批判しません。結果として自民党と似た政策になったとしても、それが真摯に日本の未来像を考えた上での結論なら、かまわないと思います。大事なのは、日本の社会システムを構築する力、なのだと思います。政治家の役割とは本来、それだったのではないでしょうか。

自民党の作り上げたシステムに、私は決して同意しているわけではありません。
むしろ疑問を持ち、批判的であるからこそ、別のシステムを呈示し、我々に選択のチャンスを与えてくれる政党を、心底から待望しているのです。


それなのに・・・。この極めて大切な今の時期に・・・!
今回の国会質疑で民主党がしたことはなんでしょうか?
与党幹事長の送金疑惑を追及することも、確かに無意味ではないでしょう。しかし私に言わせれば、政治家個人の送金(献金?)疑惑など四点セットの前ではあまりに小さな問題です。幹事長を失脚させることと、日本の未来像を描き出すことと、どちらが重要ですか?
私の感覚では、メール問題にかける時間など1〜2時間で十分です。それがもし根も葉もある事実なら、暇でスキャンダルに飢えたジャーナリストや、それこそネットで活躍する敏腕ブロガー諸氏が、放っておいても追及してくれるでしょう。政治家の役割は献金疑惑の追及ではないはずです。
そんな些細な問題より、官製談合の実態解明や、耐震偽装問題への政府の取り組みの問題点を、じっくり炙りだして欲しかったのです。それこそが真の野党の役割ではないでしょうか?

私が思うに、前原民主党は「日本をどうするか」より「自民党をどう攻めるか」に力点を置きすぎたのです。国民の立場に立てば、与党が自民であろうが民主であろうがどうでもよいことです。どの政党でも良いから、「日本をより良い方向へ導いてくれそう」な政党に票を投じる、それが有権者の心理ではないでしょうか。
政権交代を狙うというなら尚更、民主党は「日本をどうするか」を描き出すべきでした。敵(自民党)を攻めるのは二番目で良いのです。
その優先順位が、決定的におかしい。これが今の民主党です。今回のメール騒動では、それが否応なく明らかになりました。もし優先順位がきっちりしていれば、メールの信憑性を問われた早期、まだ傷も浅いうちに素早く引き返す決断ができたはずです。
国会の質疑時間は国民全体の共有財産でもあります。そうした視点も、まったく欠けていました。前原民主党の目に映っているのは「国民」ではなく、まず「自分=民主党」次に「敵=自民党」、一番最後に「有権者」です。これははっきりわかりました。

そして最後に前原氏です。彼には心底失望しました。期待していただけに、脱力感で立ち上がれない思いです(大袈裟!)
これが国会の場で、本当に良かったです。考えてもみてください。もし民主党が政権を取ったら、そして前原氏が総理大臣となり、外交の場で、各国首脳を前にあんなハッタリを言うようなことにでもなれば・・・!
国内の話だから、お詫びや陳謝程度で済みますが、もし外交であんなことをされたら、日本は簡単に吹っ飛んでしまいます。中国、米国、ロシア、EU、イスラム諸国・・・。どの国が相手であっても、あんな人では怖くてとても表に出せません。大局観がまるでなく、手持ちカードの確認もせずにその場の勢いで突っ走り、かつ周囲の忠告にも耳を貸さず、しかも態度だけは妙に迫力があるのです。最悪です・・・(困

政治は政治なのです。
「巨悪がある」・・・。それはおそらく(想像ですが)真実でしょう。しかし国政を預かる政治家が言うことではありません。確たる証拠もなく「巨悪」で政治を動かされてはたまったものではないからです。
「巨悪がある」・・・だから「中国は脅威」ですか? イラクでは? 「巨悪がある」だから米国と手を組むのですか? あるいは逆に手を切るのですか? なにも材料がないのに、「巨悪」というイメージで突っ走り、それを理解せよと国民に求められても困るのです。
私が言いたいのは、発想があまりにお子様だということです。素人並です。とても政治家とは思えません。そうした「巨悪」こそ、ジャーナリストや無償で勤勉に活躍する一般ブロガー諸氏に任せておけばよいじゃありませんか。有権者が議員バッジを預けた政治家達に望むのは、献金疑惑追及でも「巨悪」でもなく、「政治」なのです。

この点で、自民党の方がずっとまともだ・・・と、思ったことを、私は正直に記しておこうと思います。
自民党の作り上げたシステムは欠陥だらけ穴だらけで、今後もその穴はますます広がるかもしれません。政官業の癒着は甚だしく、政治家諸氏は金太りしているに違いありません。しかしそれでも、民主党よりはマシに「政治」をしている・・・ようにしか見えません。なぜなら民主党は「政治」未満のことしかできていないから。

今回のメール騒動・・・私は終始、非常に哀しい気持ちでいました。
この哀しさは、代表の首が変わった程度では到底埋め合わせできません。

同じような気持ちを味わった有権者は、日本中に大勢いるような気がします。


 
posted by 水無月 at 08:35| Comment(3) | TrackBack(0) | 国内(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はい、私も全く同じような気持ちを味わいました。
こんなお子ちゃまに投票したのかと愕然とした有権者も多かったと思います。
あれで代表を辞めないってンだから、あきれてものが言えませんね〜。党員の大量離脱が始まらないかしら。
野党の党首にはカリスマ性と常識の備わった大人じゃなきゃ無理だと思いますね。
Posted by dashi at 2006年03月02日 14:31
こんばんは。
小選挙区制では、どうしても2大政党の対決になり、
どっちも余裕が無く且つ、メディアの強力な影響下で、
つまらないスキャンダルがさも大ニュースとして
扱われますね。前原民主の無能もそのつまらないのの
1つでしょう。おかげで市民はいい迷惑と言うのが
つまらなくない唯一の点かな、そのつまらなさの中で。
色んな意味の「再編・改正」問題が大事ですね。

明治が生き生きした時代だったのは、小さい結社・結党が、
真剣勝負を繰り返す時代だったからでしょう、藩閥・身分を越えて。
今の自民は55年体制時のような多派閥組織ではないので、
かつての活力は望めませんね。
出来る限り、(官民を問わず)巨大官僚機構を解体する
楔を打ち込む飛礫のような言論
(ガセ・メール一本打ち込まれてこけてる人たちもいますが)
が、偏こな且つ柔軟な言論が、重要でしょうね。

核&テロ時代には最新兵器開発やシェルター造りも、
無意味でしょうから。迎撃ミサイル等も無駄遣いですね、
先端技術開発という「頭の体操」にしては贅沢が
過ぎます。

おっと、テーマからすこし離れて過ぎてしまいました、
すみません。
Posted by 建つ三介 at 2006年03月02日 23:35
 
完全に治りきった自覚もないうちにまた風邪引いちゃって
ますます哀しい気分の増してる水無月です。こんばんは(笑
おふたりともコメントありがとうございます。

>dashiさん
 そうですね、愕然としましたね。私も。
 永田議員より前原代表の乱心ぶりの方が私はショックでしたが。
 たぶん今さら代表を辞めても、状況は好転しないと思いますが
 (永田氏の撤回&謝罪と同じで遅すぎます。何事も時期が大事)
 辞めた方が少しはマシなんですかね?
 というか、私はもう民主党を立て直すための方策を考えること自体に
 関心が持てないでいます。もう好きにしてください、という感じ(汗


>建つ三介さん
 先日はしつこくお邪魔して申し訳ありませんでした&ありがとうございます。
 前原民主の無能さをネタにメディアが騒ぎすぎ(浮かれすぎ?)
 ということには同意しますが、国民(市民)の被害は
 「迷惑」というには甚大すぎるような気がします。
 こりゃやっぱり自民じゃなきゃダメだ、と思った有権者は
 相当の割合に及ぶと思います。このまま次の国政選挙まで
 事態が変わらず、与党六割越え・・・なんてことになったら
 (その可能性は無視できないほど高まったと思います)
 ほとんどノーチェックで日本は曲がり角を曲がりきってしまうでしょう。
 その後はまた五十年くらい突っ走っちゃったりして・・・ね
 まさに第二の明治期です。

 >迎撃ミサイル等も無駄遣いですね
 軍備は私は詳しくないですが、米国との共同「迎撃ミサイル」がないなら
 国民世論は「核の(抑止的)保持」へ傾く可能性もある・・・かもしれません。

Posted by 水無月 at 2006年03月03日 03:28
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