2006年02月17日

続・ペンは剣より強いか(風刺画問題)

ムハンマドの風刺画問題。続報です。
前エントリはこちら → http://yohaku.seesaa.net/article/12908797.html

なお、この風刺画問題で私は「ペンは剣より強いか」とタイトルをつけていますが、これは、ペン=欧州各紙(または西側諸国もしくは「表現の自由」あるいは民主主義)、剣=イスラム世界の人々(またはイスラム教国もしくはテロリズムあるいは宗教感情)という意味ではありません。
ペンに相当するものは欧米にもイスラム世界にもあるでしょうし、剣に相当するものもまた同様と考えています。ペンと剣との戦いは、もしかしたら個人個人の胸の中で行われているのかもしれません。
そうした私の抱く漠然とした問題意識を背景にしたタイトルであることを、あらかじめご説明しておきます。

では本題です。まず、2月6日までの動きで前エントリから漏れていた部分の補足から。


2005年9月
 デンマークの保守系有力紙ユランズ・ポステンが発端となった風刺画を掲載。同紙担当編集者フレミング・ローズ氏は翌年2月5日付英オブザーバー紙に風刺画掲載の動機を説明。デンマーク人のコメディアンがキリスト教の聖書は自由に笑いのネタにできるけれども、イスラムの聖典コーランについてはそれができないと語ったこと、子どもの絵本作家がムハンマドを描くイラスト画家を見つけられなかったこと、こうしたことを知り、反発を恐れて作家や芸術家、劇場関係者が自己規制している社会問題で一石を投じた、というもの

  10月
 デンマークのイスラム教徒が「預言者を敬う欧州委員会」を発足、1万7000人分の署名を集め政府に提出。文化相や同紙編集長と会談して謝罪を求めたが、拒否される。コペンハーゲン駐在のイスラム諸国大使らとラスムセン首相との会談も促したが、首相側の反対で実現せず。
 同委員会はアラブ諸国大使らに働き掛けを開始。問題を訴えるため、風刺漫画を含む冊子も作成。 ←冊子作成はOKなのか?
 同委員会スポークスマンのアフメド・アッカリ師「デンマークの政府やメディアが我々の訴えを無視したのが問題を大きくした」「我々は暴力を扇動したことはない」。(この問題に詳しいデンマークのポリティケン紙トムセン記者「首相の会談拒否が転換点だった。イスラム組織側は対話をあきらめ過激化し、エジプト大使館経由で海外の支援を求めた」)

  12月以降
 同委員会がエジプトやレバノン、シリアで、宗教指導者やムーサ・アラブ連盟事務局長と会談、事情を説明。

  12月7、8日
 イスラム諸国会議機構(OIC)の首脳会議開催。エジプトのアブルゲイト外相が冊子を持参。同会議では「ムハンマドの冒涜」を批判し、「表現の自由は言い訳にならない」とする文書を採択。この後、イランやシリアなどの国営メディアで問題が大きく扱われるようになる。

2006年2月5日
 国連のアナン事務総長が暴力停止を訴える緊急声明を発表(2日に続いて二度目)
 イスラム諸国会議機構(OIC)が、イスラム教徒デモ隊によるダマスカスのデンマーク・ノルウェーの両大使館放火を非難する声明を発表。
 デンマークのムラー外相が英語で記者会見し、イスラム諸国の指導者に事態沈静化へ向けた協力を呼びかける。

 ロンドン。前週に行われたデモで「欧州は報いを受けるだろう」「欧州版9・11を覚悟せよ」など、テロ攻撃をあおるプラカードが使われていたことが明らかになり、野党政治家からデモ参加イスラム教徒の逮捕を求める発言が出る。

 イラク運輸省がデンマーク・ノルウェー両国の企業との契約を凍結。「われわれは、デンマークとノルウェーからは復興資金を一切受け取らない」
 イラク武装勢力が駐留するデンマーク軍への攻撃を呼びかける。

  2月6日
 イランで抗議デモ(前エントリにて既述)。この抗議デモを伝えたのはイラン学生通信

 中国の李肇星・外交部長が、ノルウェーのストーレ外相と会談。「宗教や文明が異なる場合は、相互尊重、相互親善を重視するべき」「国際法に基づいて外交使節団の安全が守られなければならない」などと発言。




続いて2月7日以降の動き。


2006年2月7日
 イラン最高指導者ハメネイ師が欧米を非難。「欧米はイスラム教徒10億人に対する侮辱は許すが、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)神話を疑うことは認めない」
 イランのハムシャフリ紙がユダヤ人虐殺(ホロコースト)を題材とする漫画コンテストの開催を発表。海外の漫画家にもコンテストへの参加を呼びかけ、西側諸国がホロコースト風刺にどこまで寛容になれるか確認する。「西側諸国は言論の自由を、米国やイスラエルの犯罪、ホロコーストにも拡大するだろうか。それとも言論の自由は、宗教的尊厳を傷つけることが唯一の目的だろうか
 イランのデンマーク・ノルウェー両大使館に火炎瓶が投げつけられる騒ぎ。

 国連アナン事務総長、イスラム諸国会議機構(OIC)イフサンオウル事務局長、欧州連合(EU)ソラナ共通外交・安全保障上級代表国連の3者が連名で、関係者による対話と沈静化を呼びかける共同声明を発表。「我々は表現の自由を完全に支持する」「イスラム教世界が深く傷つき、怒りが広がっていることを理解する」「報道の自由には、責任と思慮が求められ、あらゆる宗教の信仰と教義を尊重すべきだ」「人命や財産に対する攻撃は、平和的なイスラムというイメージを損ねるだけ」

 デンマーク・ラスムセン首相が記者会見し「われわれは拡大する世界的な危機に直面している」と強い懸念を表明。対話による解決を呼びかける。またブッシュ米大統領から電話で、暴力に反対するデンマーク政府を支持すると伝えられたことを明らかにする

 ロシア・チェチェン共和国のカディロフ首相代行が国内でのデンマーク民間団体の活動を禁じる、と言明。

 アフガニスタン北西部で抗議群衆がノルウェー軍駐留施設を襲撃。制止しようとした地元警察の発砲などで4人が死亡、15人が負傷。ノルウェー国軍兵士2人も軽傷を負う。

 フィリピン南部ミンダナオ島コタバト市でイスラム教徒数百人がデンマーク国旗を燃やすなど抗議し、デンマーク製品ボイコットを呼びかける。参加者の大半は学生。←ここでも学生?


    8日
 イスラム教聖職者らのグループがテレビやラジオを通じてデモに伴う暴力行為をやめるよう訴える。
 イラクのイスラム教シーア派最高幹部の1人、アブドルアジズ・ハキム師がモスクで演説。デモ隊への自制を呼びかける一方、デンマーク・ノルウェー両国政府に対し、騒ぎの拡大を食い止める新たな対策を求める

 過激な風刺で知られるフランスの漫画週刊紙シャーリー・エブドが「ムハンマド特集」を発売。16万部即売、増刷で40万部完売。デンマーク紙の12点を転載したほか「ムハンマドも原理主義者にお手上げ」として、顔を両手で覆った預言者に「愚か者に愛されるのもつらい」と言わせた。有力イスラム組織は掲載紙の発行差し止めを求めていたが、裁判所は書類の不備を理由に棄却された。
 同紙編集幹部「表現の自由は、一つ譲ればまた一つと後退していく。我々は何も恐れず、あらゆる宗教を取り上げ続ける」。シラク仏大統領「激情を危うくかき立てるすべての挑発を非難する。表現の自由は、責任感と寛容の精神を伴うべきだ」


 米国の無料紙ニューヨーク・プレスの編集長ら編集幹部4人が、風刺画掲載を同紙経営側の判断で取りやめたことに抗議して辞任。「暴力を巻き起こすきっかけとなった漫画の掲載」を控えるのは「偽善」にすぎないとした。(米国では風刺画掲載に踏み切った新聞はニューヨーク・サン紙など少数にとどまっている)

 ニュージーランドで風刺画転載をした新聞社やテレビ局4社がイスラム教団体連盟に対して、イスラム教徒の怒りを招いたことを謝罪。

 欧州連合(EU)のソラナ共通外交・安全保障上級代表が関係修復を目的に、12日にも中東歴訪に出発する方針を明らかに。

 ライス米国務長官はこの問題で、イランとシリア政府がイスラム教徒の怒りをあおっていると批判。ブッシュ大統領はヨルダンのアブドラ国王と会談し「我々は報道の自由を信じるが、報道の自由には他の人たちを思いやる責任が伴う」と発言して各国政府に事態沈静化を呼びかける。
 イラン政府がライス氏発言に反発「100%ウソの主張」。
 シリア駐米大使は「反西側諸国感情を煽っているのはイラク情勢と、(イスラエルによる)ヨルダン川西岸やガザ地区の占領だ」とコメント。


 パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のヘブロンでヘブロン暫定国際監視団(TIPH)の建物をパレスチナ人らが包囲、投石などで建物に被害。(TIPHはイスラエル入植者とパレスチナ人の衝突を防ぐために1994年に設置され、ノルウェーが主体)
 アフガニスタンの南部カラートにて米軍基地近くでデモ隊と警官隊が衝突。デモ参加者2人が発砲で死亡、少なくとも14人が負傷。
 このほか、バングラデシュの首都ダッカで少なくとも1万人規模のデモが開催。ナイジェリアやパキスタン、エジプト、イエメン、ジブチ、ガザ地区、アゼルバイジャン、インド、フィリピン、インドネシアでも抗議行動。
 アラブ首長国連邦では風刺画のコピーを学生に配布した大学教授が解雇される。

 この頃、欧州のジャーナリストや政治風刺画家の間から、風刺画掲載を批判する声も上がる。「すでに困窮した少数派であるイスラム移民を意図的に攻撃する低俗で卑劣なもの」など(http://www.janjan.jp/world/0602/0602139174/1.php)。


    9日
 発端となったデンマーク紙ユランズ・ポステンが3年前、攻撃的過ぎるとしてキリストの風刺画の掲載を拒否していたことが、漫画作者の告発でわかる。「私が漫画を見せたキリスト教徒は誰も傷つくことはなかったが、編集者はキリスト教徒に限らず読者全般に対してこの漫画は攻撃的だとして掲載を拒否した」。掲載を拒否した当時の編集者は、漫画が優れていなかったから掲載しなかった、と主張。
 同紙編集者フレミング・ローズ氏は、この風刺画は勝手に送り付けられたものだったとしたうえで、西側諸国が主張している表現の自由に挑戦する形でイランが掲載すると表明したホロコーストの風刺画も掲載したいとの考えを示す(翌日撤回


 マレーシア政府が、風刺画を転載したサラワク・トリビューン紙を発行停止処分にする。(現在マレーシアはOIC議長国)

 エジプト・アブルゲイト外相が欧州各国に対して、イスラム教に対する不敬を慎むよう求める書簡を送る。エジプト各地で抗議集会やデモが発生。スーパーではデンマーク製品撤去の動き。
 ユランズ・ポステン紙が、エジプト有力紙に謝罪メッセージの全面広告を掲載

 前日のシャーリー・エブド仏紙の新たな風刺漫画掲載に関し、国連アナン事務総長がメディアに自制を呼びかける。「言論の自由は何をしてもいいということではない。責任感や判断力を問うものだ」

 レバノンの首都ベイルートで、イスラム強硬派組織ヒズボラが絡むデモ行進。主催者発表で約70万人、治安当局は約40万人が参加。警官との衝突などの混乱はなかった。←40万人って本当?
 デンマーク外務省が自国民にレバノンからの退避勧告。レバノン首都ベイルートにあるデンマークの在外公館を一時閉鎖。

 アフガニスタンで平和維持活動を行っている北大西洋条約機構(NATO)の非公式国防相理事会が二日間の日程でイタリアにて開催開始。風刺画問題も議題に上る中、加盟国は予定通りアフガン南部への治安支援部隊展開を進めることを確認し、デンマークに対し「連帯」を表明。

 スペイン・モラティノス外相が、イランのモッタキ外相が電話会談でスペインに対し緊張緩和のため助力を求めてきたことを明らかにする。

 スウェーデンの極右政党「スウェーデン民主党」が機関紙のウェブサイト上に、イスラム教預言者ムハンマドの風刺漫画を掲載。目隠しをして鏡をのぞき込み、「デンマークのムハンマドは自己検閲している」と書き添えているもの。同国外相が懸念を表明し、自重を促す。

 デンマークのユダヤ教指導者とプロテスタント最大教派ルーテル教会の主教が、事態の沈静化を呼びかける共同声明を発表。

 パレスチナ自治政府の実権を握るイスラム急進派ハマス指導者のハレド・メシャル氏が、記者会見。西側諸国がイスラム教徒の感情を逆なでする行為をやめると約束するなら、ハマスは事態鎮静化にひと肌脱ぐ用意があると表明。
 アフガニスタンのイスラム原理主義組織タリバンの軍事司令官のダデュラ氏が、風刺画に抗議する自爆テロ志願者100人を用意したと言明


    10日(イスラム教の金曜礼拝の日に当たる)
 マレーシアのアブドラ首相が会議上で講演。イスラム教徒と西洋社会の相互尊重を呼びかける。
 NATOが中東や北アフリカの地中海7カ国と合同の国防相会議。イスラム諸国との協力を確認。地中海諸国に事態沈静化への働きかけを求める。

 インド最大のモスク前で抗議集会が開かれ、1万5000人が参加、デンマーク国旗が焼かれるなどした。同モスクのアフメド・ブハリ師は、インド政府がデンマーク政府に謝罪を要求するよう呼び掛けた。「フランス、ドイツ、ノルウェー、デンマークの悪魔的な計画には屈しない」
 パキスタン、バングラデシュなどアジア各国で抗議デモが相次ぐ。いずれも数千人規模。
 香港メディアが、香港で17日にイスラム教徒によるデモが計画されていると報道。
 エジプト各地でイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」などの呼びかけによりデモ多発。カイロでは約1000人がデモ行進し、「ビンラーディンよ、コペンハーゲンを爆破せよ」と訴えた。治安部隊が催涙弾や放水でデモを鎮圧。
 イランで数十人がフランス大使館に投石し、通りに面した窓を破損。
 ケニアでは、約200人のデモ隊がデンマーク大使公邸に向けて行進、治安部隊の発砲で1人が負傷。

 在仏イスラム教評議会(CFCM)が、風刺漫画を掲載したシャーリー・エブド紙を提訴することを決定。

 デンマークがシリアの大使館、レバノンおよびチュニジアの領事館を閉鎖。


    11日
 フランスで7000人規模の抗議デモ。「宗教の尊重と表現の自由は矛盾しない」「侮辱をやめよ」などの横断幕。同国東部でもイスラム系団体に組織された約1000人が抗議行動を行い、デンマーク国旗を踏み付けるなどした。
 ドイツ、デュッセルドルフのデンマーク総領事館前で約2000人がデモ行進。ベルリンでも約1200人が抗議行動。
 イギリスのロンドンにて、警察推定で3500人、主催者発表で1万人がデモを行う。リビングストン・ロンドン市長は抗議活動を支持し、こうした(平和的な)デモはイスラム社会主流派の見解を表明する適切な方法だと述べる

 デンマークがイランとインドネシアの大使館を閉鎖。館員たちに両国からの出国を命じる。また、インドネシア在住の国民に対し退避勧告を出す。

 パキスタンでパキスタン・イスラム教徒連盟(PML)や統一行動評議会(MMA)などの与野党関係者が、風刺画に抗議する全国規模のストライキを3月3日に予定していることを明らかに。スト実行の場合、国内の企業や政府機関、学校などが全面的に閉鎖される。関係者らは、デモ開催で他のイスラム諸国とも連携を図っているという。

 アルジェリアで、風刺画を掲載したとしてイスラム系週刊紙2紙が発行禁止処分を受け、それぞれの編集者1人ずつが逮捕される。

 デンマーク紙ユランズ・ポステンのフレミング・ローズ氏が無期限の休職に入ったことがわかる。同氏はイラン紙がホロコースト(ユダヤ人大虐殺)に関する風刺漫画コンテストを行うのに同調し、同時掲載する意向を示していたが、同紙のカーステン・ユステ編集局長は同紙ホームページで「火に油を注ぐようなことはしない」と掲載を否定。「ローズ氏の判断の誤りで、編集長もミスを後悔している」とのコメントを発表。

   (期日不明 これより前)
エジプト英字誌アルアハラム・ウィークリー紙「ブッシュ米政権が(イラク戦争で犠牲者の実態を詳報したアラブ衛星テレビの)アルジャジーラ本部の爆撃まで計画していたことが暴露されたのに、西側政治家はこれを非難しなかった。その一方で、今回『自由』を唱えている。奇妙なことだ」(12日しんぶん赤旗報道)

 インドネシアのユドヨノ大統領が11、12日付英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンへ寄稿。「世界中のイスラム諸国で暴力も含めて広がる抗議を止める重要なステップは、問題の風刺画を表現の自由として正当化することと転載をやめること」「風刺画の転載は『(西側)民主主義においてはイスラム教を攻撃してもさしつかえないもの』というメッセージを送ることになり、『民主主義とイスラムが共存できることを示す努力を傷つけるものだ』と指摘」「イスラム諸国で西側の習慣が受け入れられているし、米国を含む西側でイスラムは急成長する宗教となっている」「イスラム教徒にとって不寛容と無知とたたかう最善の方法は・・・中略・・・平和的宗教としてイスラム教を発信することである」「イスラム教への攻撃を誠実に謝罪した人々を許さなくてはならない

 10〜11日「Who Speaks for Islam? Who Speaks for the West?」と題する国際会議がマレーシアで開催される。
 イスラム諸国機構(OIC)の議長を務めるマレーシアのバダウィ首相「西側の覇権主義が、イスラムを怒らせている。彼らは、パレスチナ蹂躙、アフガニスタン攻撃、イラン占領を覇権の具体例と見ている。米国主導のテロ戦争が、両者の溝を広げる結果になった」
 同国ナジブ副首相「人類は、限られた一部の人間に偏った発言を許していないか。イスラム社会にとって、体に爆弾を巻きつけショッピング街を爆破するテロリストは、世界10億余のイスラム教徒が信奉しているムハンマドを揶揄する新聞編集者と変わりがない。イスラム社会と西側諸国間で、犯してはならない基本的な線引きがなされていれば、文化の衝突は起こらないはず」


    12日
 ライス米国務長官は、シリアなどが暴動をあおっていると非難。イランの新聞が計画しているホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)漫画コンテストの実施を強く批判。
 デンマークのラスムセン首相が、シリアとイランは自国の問題から注意をそらすために利用していると述べる。

 イラン外務省の報道官が8日のライス氏発言に関し反論。抗議デモは「自然な反応」であるとし、こうした発言が事態を悪化させると指摘。またデンマーク当局者らやライス氏が謝罪すれば緊張は緩和されるとの認識を表明。
 イランのモッタキ外相も記者団に対し、デンマークがすみやかに謝罪した場合、問題は直ちに解決しただろうとコメント。また、アハマディネジャド同国大統領と同様に、風刺画がイスラエルの陰謀だと主張。

 トルコとインドネシアで抗議行動が開催されたほか、ヨルダン川西岸のモスクでムハンマドを侮辱する落書きが発見されたことから騒乱が発生。

 デンマーク西部でイスラム教徒の墓25ヶ所が何者かに荒らされ、ラスムセン・デンマーク首相が事件を直ちに非難。
 デンマークで移民受け入れに反対の立場を取るデンマーク国民党が1ヶ月前より3.6%支持率を増やし17.8%(ユランズ・ポステン紙報道)。同党関係者は、国内のイスラム教指導者らがイスラム諸国で反デンマーク感情を煽る宣伝活動を行い、暴動を引き起こしたと主張。

 ドイツでは6−7月に行われるサッカーW杯の際に、フーリガンやテロ対策のためドイツ連邦軍兵士を配備すべきかどうかをめぐる議論が白熱。緊急災害時以外の兵力の展開を禁ずる基本法(憲法)の改正論議にまで発展。


    13日
 欧州連合(EU)のソラナ共通外交・安全保障上級代表が57カ国・機構が加盟するイスラム諸国会議機構(OIC)のイフサンオウル事務局長と会談。問題沈静化へ協力を求めた。同代表はサウジのアブドラ国王と会談後、14日以降エジプト、ヨルダン、パレスチナ、イスラエルを歴訪予定。
 ソラナ代表は「我々は宗教を侮辱する意図はなかったし、今後もない」と強調。しかしイフサンオウル事務局長が欧州議会で宗教侮辱を禁じる法整備をするよう求めたのに対し、同代表は2度と起きないよう最大限の努力をするとの答えにとどめ、立法化の可能性には言及せず。

オーストラリアの著名漫画家マイケル・リューニッグ氏が、イラン紙ハムシャフリによるホロコースト題材の漫画コンテストに応募したとイラン紙上で報道されたことを受け、これを否定。ハムシャフリ紙編集部は同氏の要求を受け「応募作品」をウェブサイトから削除。同氏は先月、イスラエルのシャロン首相を批判する風刺画がジ・エイジ紙に掲載されたことで、オーストラリアのユダヤ人社会からやり玉に挙げられていた。


    14日
 パキスタン東部ラホールで数千人が参加した抗議デモで一部が暴徒化。米国系ファストフード店などを襲撃。ガードマンが群衆に発砲し、参加者2人が死亡。シェルパオ内相はラホールに軍を派遣。また同国首都の大使館集中地区でも1000人以上が抗議。日本大使館周辺ではタイヤなどが燃やされ、インド大使館では車の窓が割られるなどした。国会前でも約4000人が抗議行動。

 イラク南部のバスラ州評議会は、デンマーク政府が謝罪しない限り州内に駐留するデンマーク軍の撤退を要求するとの声明を出す。声明に法的強制力はない。デンマークはイラク南部に約500人の部隊を派遣している。デンマークのゲーデ国防相は同日、イラク駐留軍を撤退させる考えはないと語る。

 ドイツの全国紙ターゲスシュピーゲルが自爆テロを示唆するイラン人サッカー選手の漫画を10日付で掲載したことに関連し、抗議者がイランのドイツ大使館に投石する騒ぎ。在独イラン大使館「イラン国民だけでなく、スポーツ愛好者らに嫌悪と怒りを生んだ」と、同紙の発行元に謝罪を求める手紙を送る。14日付同紙「抗議は誤解に基づくものであり、残念。漫画はドイツの内政問題を描いたもの」


    15日
 パキスタン北西部のペシャワールで約7万人が抗議デモを実施。暴徒化した一部群衆がノルウェーの携帯電話会社「テレノール」のオフィス2カ所や米系ファストフード店、映画館などを相次ぎ襲撃・略奪。8歳の少年を含む2人が死亡、40人以上が負傷した。
 同国東部ラホールでも学生ら千数百人規模のデモが発生。警官隊との衝突で1人が死亡。同国西部のタンクでも千数百人が抗議デモ。
 パキスタンのデモ隊が韓国会社・三美(サムミ)グループが運営するペシャワルのバスターミナルに放火。数十億ウォン(約数億円)台の財産被害が発生(中央日報)。
 パキスタンのムシャラフ大統領とアフガニスタンのカルザイ大統領が、イスラマバードで首脳会談後に記者会見。欧米各国の指導者に対して冒涜的な行為を認めないよう求める。

 豪州のテレビ局が、イラク・アブグレイブ刑務所での収容者虐待写真を放映。2004年に米テレビが報じた虐待写真と同じ03年後半に撮影されたもので、その未公開分。米国務省のべリンガー法律顧問は「新たに写真を公表する価値はない」と述べ、不快感を表明。「こうした問題に対する感情が世界で強まっている時期に写真を公開するのは(反欧米感情を)あおるだけだ

 インドネシア全国輸入業者協会(約7800社)がデンマーク製品の輸入ボイコットを発表。「デンマーク政府がイスラム教徒に謝罪するまでボイコットを続ける」

 イギリス議会下院は反テロ法改正案を賛成多数で可決。法案は「テロの称賛」を違法とする条文に対し「表現の自由を脅かしかねない」との批判が上がっていたが、ブレア政権は一部を修正、風刺画問題を追い風にした。

 欧州連合(EU)の欧州議会は風刺画問題を集中討議した。中東諸国の一部でデンマーク大使館が襲撃されたことについて「EU全体への襲撃」と指摘、暴力行為を非難。デンマーク製品不買運動について「欧州製品全体への不買運動と見なされる」と批判。


    16日
 パキスタン南部カラチで約4万人が参加する抗議デモ。デンマーク首相の肖像画を燃やすなど。

 イランの駐ポルトガル大使がナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)に関し「(殺害されたユダヤ人)600万人の死体を焼却するには15年かかったはずだ」などと述べ、疑問を呈す。ポルトガル外相は声明を出し、発言は歴史の歪曲であり「受け入れられない」と同大使に伝えたことを明らかにした。




ソースは前回と同じく、Googleで検索できる日本語配信ニュース記事です。
世界各地の関連する出来事と、各国の色々な人の立場からの発言を(いずれも全体から見ればごく一部を、不完全に)まとめただけですが、それでも考えさせられましたね。
正面から取り組むにはあまりに大きな問題ですので、以下、私の感想をごく簡単に列記することで、締めとします。

 ◇ 「ムハンマド風刺画」は表現の自由の行使より、他国の国旗を焼く行為にずっと近しいのではないでしょうか。少なくともイスラム世界の人々はそう感じたのだと思います。西側世界の人々はそうした感じ方を認識しておいた方がよいでしょう。他国の国旗を焼く自由は保障されねばならなりませんが、その行為が尊敬されることはありません。

 ◇ 「ムハンマド風刺画」はキリスト風刺画でなくホロコースト風刺画に比すべし、というイスラム世界の感覚は、欧米での反応を見る限り、どうやら的を射ているようですね。事態打開のため、ホロコースト風刺コンテストが平穏のうちに終了することを私は望んでいます。

 ◇ 風刺画転載が止まないのは表現の自由を守るためでなく、売り上げを伸ばすためでは? と疑ってしまいました。欧州紙の発する商業主義の匂いが彼らの標榜する「表現の自由」を台無しにしています。

 ◇ 1万7千人署名の段階では謝罪を拒否し、問題が大きくなったあとで謝罪するデンマーク紙の行為から、イスラム世界は彼らの手にする有用な武器は相変わらず連帯と暴動であることを学んだことでしょう。

 ◇ EUはデンマーク製品不買運動を非難すべきではないと思います。不買運動という抗議方法を封じてしまえば、次に彼らが手を伸ばせる方法には、もうさほど選択の余地も残されていないような気がします。



2月16日から17日にかけSeesaaBLOGサービスの障害が起きていたようです。
ご不便をお掛けしたかもしれませんが、そういう事情ですので、どうぞご了承ください。





posted by 水無月 at 06:00| Comment(7) | TrackBack(2) | その他国外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月07日

ペンは剣より強いか(風刺画問題)

ムハンマドの風刺画に端を発する「表現の自由」騒動に関する一文です。いまや世界中に伝播しましたね。
まずはじめに、現時点までの事件の経過をまとめてみます。主なソースは【Google NEWS】で検索できた日本語新聞です。


2005年9月30日
 デンマーク保守系有力紙ユランズ・ポステンが「表現の自由」についての記事と共にイスラム教預言者ムハンマド(モハメッド、マホメットと表記されることもある。キリスト教のイエスに相当)の風刺画を掲載。
 導火線のついた爆弾の形をしたターバン姿のムハンマドが描かれたもの(イスラム教では偶像崇拝を否定しており、ムハンマドの肖像は特に重い禁忌となっている。今回は異教徒の行為、しかも戯画化ということで、イスラム教への冒涜と同教徒らは受け止めたようだ)。

  10月上旬
 デンマークのイスラム教徒団体が抗議声明。

2006年1月5日
 デンマークのムラー外相とムーサ・アラブ連盟事務局長が電話協議。

(この頃まで)デンマーク政府は抗議を静観。

  1月10日
 ノルウェーキリスト教系誌マガジネットが風刺画を転載。

  1月25日
 サウジアラビア宗教界最高権威「大ムフティ」が、デンマーク政府に対し、ユランズ・ポステン紙の処罰を求める。

  1月26日
 サウジアラビアが駐デンマーク大使を召還。

  1月末
 中東諸国でデンマーク商品不買運動広がる。(期日未詳)民間レベルでもデンマーク国旗を燃やすなどの抗議活動が発生。

  1月29日
 リビアが在デンマーク大使館を閉鎖。

  1月30日
 パレスチナ自治区ガザで武装グループが欧州連合(EU)事務所を包囲、謝罪要求。

 ユランズ・ポステン紙編集長が謝罪。「掲載した風刺漫画はわが国では法律違反ではないが、多くのイスラム教徒の心を傷つけた」

  1月31日
 ユランズ・ポステン紙に爆弾を仕掛けたと脅迫電話。社員一時避難の騒ぎ。

  2月1日
 仏紙フランス・ソワールが朝刊で風刺画転載。社説で「漫画には犯罪性や差別的な意図はない」と主張。
 独の保守系有力紙ウェルトが1面で漫画転載。「西洋では風刺が許されており、冒涜する権利がある」「民主主義とは言論の自由を具体化したもの」と主張。

  2月2日
 フランス・ソワール紙のエジプト系フランス人社主ラカ氏が謝罪。同紙編集局長を更迭
 ノルウェーがヨルダン川西岸の代表部を閉鎖。
 英BBC放送が風刺漫画を放映。

   〜2日
 シリアがデンマーク大使召還。

  2月3日
 ラスムセン・デンマーク首相がイスラム教国などの駐コペンハーゲン大使と会合。「新聞社はより明確な形で謝罪すべきだが、政府の謝罪はあり得ない。表現の自由は最重要の原則だ」との同首相に対し、出席したエジプト大使は「デンマーク政府は事態改善のために何らかの手を打つべきだ」

 フランス有力紙ルモンドが、「私はムハンマドを描いてはいけない」というフランス語の文を縦、横にたくさん書いて、全体としてムハンマドとみられる人物の顔が浮き彫りになる漫画を1面に掲載。社説にて「イスラム教徒にはムハンマドを風刺した絵はショックかもしれないが、民主主義においては、人権を踏みにじるケースを除き、言論を取り締まることはできない」と主張
 フランス・ソワール紙の編集局長解任について、同国のジャーナリスト組合が解任を非難する声明を発表。サルコジ内相は「行き過ぎた検閲より、行き過ぎた風刺の方が望ましい」と表現の自由を尊重する立場を表明。
 同国カトリック教会のリヨン大司教は2日、AFP通信に「イスラム教徒が受けた傷は理解できる」と発言。フランス司教協議会は「表現の自由には個人の信仰への敬意が伴うべきだ」と発言。
 同国ドストブラジ外相は、「(ムハンマドを)過激派やテロリストかのように描くのは異常」としながらも、抗議行動の中で同国旗が焼かれたことは「容認できない」と不快感を表明。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ、本部パリ)の松浦晃一郎事務局長が「表現の自由と、宗教上の信念の尊重という2つの原則が対立する状況を生み出さないよう訴える」と声明を出す。

 デンマーク紙から転載したノルウェーの新聞編集者がロイター通信に「掲載を後悔している」と語る。掲載以降、殺害を予告するような脅迫状が多く送られてきたといい、「こんな状況になることが分かっていれば掲載しなった。表現の自由をあきらめることを考えればぞっとするが、もうたくさんだ

 アメリカ国務省のヒギンズ報道官は欧州各紙について、「このようなやり方で宗教的、民族的な憎悪を煽ることは受け入れられない」と批判。
 マコーマック米国務省報道官は「漫画は(イスラム教徒にとって)侮辱的だ」と述べ、イスラム教徒に同情的な立場を示す。イスラム世界での反米感情の緩和を期待する思惑か? 米国の主要紙は風刺画の掲載を見送っている

 風刺画作者十二名のうち四名が匿名でインタビューに応ずる。これによればユランズ・ポステン紙は、メディアがイスラム教に遠慮して自己検閲をしていることに抗議する目的として、風刺画の作製を依頼したらしい。四名は同紙に関し「扇動的な反動主義者の集団」と非難。一方で「風刺画に対する暴力的な反応は、表現の自由がいかに大切かを知らしめる効果があった」。

   〜3日
 欧州7カ国紙(フランス、スペイン、イタリア、オランダ、スイス、ドイツ、チェコ)が風刺画を掲載。
 欧州連合(EU)は、デンマーク製品不買運動が起きているサウジアラビアに対し「運動を助長すれば世界貿易機関の規定に抵触する」と警告。
 ロシアでイスラム教団体が欧州の相次ぐ漫画転載を非難。
 インドネシア外務省報道官が「言論の自由は、宗教に対する冒涜を正当化することはできない」と批判。
 トルコのデンマーク大使館前にデモ隊押しかける。
 デンマーク政府が国民に対し、中東への渡航に注意を呼びかける。
 ノルウェーがパレスチナ自治区からの一時退去を促す。
 パレスチナの武装勢力が風刺漫画の掲載国へ警告。デンマークへのテロ予告。
 ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区でドイツ人男性が武装したパレスチナ人に一時連れ去られる。
 パレスチナ自治区ガザ、イラク、トルコ、パキスタン、インドネシア、マレーシアでデモが発生。

  2月4日
 ガザでパレスチナ人数十人がドイツの文化センターを襲い、窓ガラスやドアを破壊。欧州連合(EU)関係の施設も投石の被害受ける。
 シリアのデンマーク大使館前に集まった数百人のデモ隊が投石、放火する暴動起きる。ノルウェー大使館も放火された。デンマーク・ノルウェー両国政府は自国民にシリア出国を呼びかける。

 マレーシア英字紙サラワク・トリビューンが風刺漫画を転載。編集長「漫画を批判する記事に作品を添えて、そのひどさを際だたせようとした」。翌5日一転して1面にて編集発行人と論説委員会の共同声明を掲載。「転載するべきではなかった。読者には漫画を無視してほしい」と謝罪。転載について「週末版編集長が独断でやった」。これを受け編集長は辞任。

 インドネシア・ユドヨノ大統領「風刺漫画は人々を宗教によって分断するものだ」と批判すると同時に、「デンマーク側の謝罪を受け入れ、秩序を守ろう」と国内に呼びかけ。
 シンガポールでも閣僚が相次いで欧州メディアの風刺漫画掲載を非難。
 パキスタン外務省が、同国駐在の欧州9カ国の大使を呼び抗議。

 ニュージーランドにて2紙が問題の風刺漫画を転載。翌日抗議デモ発生。クラーク首相は6日、「(政治家は報道を規制するべきではないが)これは報道の自由の問題ではない。風刺漫画の掲載は、我が国の社会や世界の一体化に逆行する」。

(この頃)アナン国連事務総長らが沈静化を呼び掛ける。

  2月5日
 レバノンでデモ隊がデンマーク領事館に放火。数千人が参加か。騒ぎで約三十人が負傷。サバア内相が責任を取り同日辞任。

   〜5日
 ヨルダンで漫画転載した週刊2紙に罰金支払いが命じられ、編集者らにも逮捕状が出される。同国アブドラ国王「表現の自由で正当化できない犯罪」。

  2月6日
 インドネシアで過激派によるデンマーク大使館前など複数の場所で投石を伴う激しい抗議デモが発生。デンマーク政府の公式謝罪を要求した。インド、タイでもデモ発生。

 アフガニスタン国内各地で抗議デモ発生。一部が暴徒化し警官の発砲などで計4人が死亡、19人が負傷(デンマークは同国に展開する北大西洋条約機構主導の国際治安支援部隊に、約百七十人の部隊を派遣している)。

 イランがデンマークとの通商関係断絶とデンマーク記者のイラン入国禁止を発表。「表現の自由には責任が伴う。風刺漫画の掲載を許した国は自国の無責任さを示した
 同国では約400人が漫画掲載への抗議デモを行い、デンマーク大使館に石や火炎瓶を投げ付ける騒ぎ。

 デンマーク政府、中東や北アフリカなどの14カ国への渡航自粛を国民に呼びかける。
 欧州連合(EU)のソラナ共通外交・安全保障上級代表「欧州市民を標的とする暴力や脅迫を強く非難する」との声明発表。

 この日発売予定の米誌ニューズウィークは、ユランズ・ポステンの担当編集者フレミング・ローズ氏との会見内容を掲載。同氏は、ムハンマドを笑いの種にするよう漫画家に頼みはしなかったと釈明した上で、謝罪の意思について「何のために(謝罪するのか)」と否定。新たな火種?




不幸な事態には違いないでしょうね・・・。

事態が錯綜していますが、とりあえず私見としては、掲載したことをあとで後悔する程度の覚悟しかない編集氏・・・には、表現の自由という言葉は口にして欲しくないですね。一方にとってはその程度の重みしかない表現の自由であっても、それを行使した結果、他方では死者まで出してしまう場所が同じ地上に存在するということを、表現に携わる者は片時も忘れるべきではありません。
そうした覚悟の上での表現の自由、でなくて、どうして剣や爆弾に対抗できるでしょう。

その意味では、謝罪を拒否したフレミング・ローズ氏の方がまだ筋が通っていると思います。ただし、氏の主張は本当に、爆弾ターバンの風刺画でなければ主張できないことだったのでしょうか。他者の権利を害することなしには主張できないというのは、そのほとんどすべての場合において、表現側の未熟さによるものだと私は考えています。氏の心意気は立派なものと好意に解釈できるとしても、編集者としての技量が圧倒的に不足していた事実までは隠せません。その謙虚な反省の弁を聞きたいものです。

ル・モンド紙の見識には流石に成熟したものを感じました。
民主主義においては、人権を踏みにじるケースを除き、言論を取り締まることはできない」
民主主義においては、です。この前置きは深く噛み締めるべきでしょう。
そして民主主義がもはや相対的な価値観でしかない事実を、欧州メディアも、我々ももちろん、忘れるべきはありません。とりわけ米国には、強く思い出してもらいたいところです。
なおイランの発言「表現の自由には責任が伴う。風刺漫画の掲載を許した国は自国の無責任さを示した」に、民主主義でない同国の表現の不自由さが如実に現れていることも、忘れずに記しておきましょう。

最後に、米国の厚顔無恥ぶり・・・。実に堂に入ったもので、吐き気のほかはなにも感じられないほどです。
「このようなやり方で宗教的、民族的な憎悪を煽ることは受け入れられない」
「漫画は(イスラム教徒にとって)侮辱的だ」
米国がイスラム諸国に「自由」を輸出するためにした「やり方」の方が侮辱的ではない、という認識なのでしょうか? 空爆の方が風刺漫画よりマシだ、とでも? あれほど「自由」「自由」と叫んでいたのですから、態度はきちんと一貫させてもらいたいものです。米国の信望する「自由」の、なんという浅さでしょう。


デンマーク紙は自国で新聞を発行したのであって、それをイスラム教国の上空からバラ撒いたわけではありません。それでもこれほどの騒動が起きてしまいました。今回の騒動は、表現の自由 VS 信仰の自由、というだけでなく、宗教を相対化する民主主義的価値観 VS 人権を相対化するイスラム教的価値観、の対立をも含んでいると解釈すべきでしょう。互いに自らを絶対視し、相手を相対化しているのですから、和解は容易ではありません。
これをもって「文明の衝突」と呼ぶのであれば、それを解決するのはペンでしょうか、剣でしょうか。今風にいうなら、インターネットなどに代表される情報化圧力でしょうか、それとも武力でしょうか、となるのかもしれませんね。
いずれにせよ、こうした価値観の衝突に由来する同種の事件は、今後も避けられないものと予想しています。人類はそれをどのように克服できるのか、あるいはできないのか・・・注意深く見守ってゆくつもりです。

posted by 水無月 at 10:21| Comment(30) | TrackBack(6) | その他国外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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